提言
以上の分析を行った上で、本提言は下記の提案を行っている。1. 現行の米軍再編計画を見直し、第31海兵遠征隊(31MEU)の拠点を沖縄以外に移転する。
2. 日米JOINT MEU for HA/DRを常設する。
3. 日米JOINT MEU for HA/DRの運用などを支援するため、日本が高速輸送船を提供する。米軍駐留経費の施設整備費を移転先で現行のまま日本政府が負担する。
4. HA/DRへの対応、その共同訓練などアジア各国の連絡調整センターを沖縄に置き、アジア安全保障の中心地とする。
日本では、「辺野古問題の解決策」というと、「どこに海兵隊を移設するか」との議論に終始してしまう。その発想を切り替え、場所ではなく、技術と運用の変更による現実的な解決を見出すよう提案している。
より現実的な選択を
16年、提言の草案を片手にワシントンを回ったプロジェクトチームのメンバー、屋良朝博からは、多くのアメリカの専門家から「具体的な対案が出てきたことを歓迎する」との声が上がったと報告があった。東京および沖縄ではすでに提言発表のシンポジウム(東京17年5月23日、沖縄17年2月27日)を開催したが、提言の発表後、真っ先に取り上げたのは、米軍の準機関紙である星条旗新聞(Stars and Stripes)であった。続いて、沖縄タイムス(2月28日)、琉球新報(2月28日および3月6日)が沖縄開催のシンポジウムについて大きくページを割いて掲載するとともに、社説で提言を高く評価した。また、続いて本土でも、東京新聞が社説(3月19日)で取り上げ、特集記事(3月27日)を掲載した。日本本土の、ある大手メディアの論説委員室に伺ってこの提言を説明したところ、軍事の視点に配慮したこのような具体的提言の作成に感謝するとの言葉もいただいた。
なお、この提言には、辺野古基地建設に反対する立場の何人かの方々から、「軍隊の正当化」「高速輸送船の提供や日本の費用負担などがなくとも単にローテーションの変更で普天間閉鎖、それだけでよいのでは」といった意見もお寄せいただいている。
辺野古の基地建設を懸念する人々の想いやその背景は、それぞれである。私も、自分がこれほどまでに防衛政策を研究するようになるとは思っていなかった。本提言の執筆陣にも、個人的見解となれば、それぞれ個別の考えもあるだろう。
それら様々な意見や異なる背景をすべて包み込む形で翁長知事を生み出した「オール沖縄」に意義があるように、それら意見はどれも重要である。それぞれ異なる意見や背景が存在する中においては、まさに役割分担が重要であろう。アメリカ向け、軍事・安保関係者向け、という役割を本報告書が担えれば、と私自身は考えている。
もちろん、この提言の基礎には米軍基地に対する「沖縄の強い反対」がある。沖縄のこれだけ強い反対を無視して基地建設を強行すれば、米国が最重要とする嘉手納基地などに対しても、沖縄の反対姿勢はさらに強まっていくだろう。
ただひたすら「辺野古が唯一の選択肢」という文言を繰り返すのではなく、一度、少しひいて、別の選択肢を真剣に検討することで、より良い結論を導く勇気を持てないものか。海兵隊の運用を学べば学ぶほど、現実の事態は柔軟で、柔軟でないのは政策決定をしている政府の思考であるとの思いが強くなる。
※「今こそ辺野古に代わる選択を -NDからの提言-」の全文は以下NDのウェブサイトよりダウンロードができる。
http://www.nd-initiative.org/topics/3372/
また提言をまとめた書籍『辺野古問題をどう解決するか――新基地をつくらせないための提言』(岩波書店)も2017年6月に刊行された。