プルトニウムは高速増殖炉で燃やして初めて資源的な価値を持つが、高速増殖炉の開発は大幅に遅れている。しかし、日本では高速増殖炉が早期に実現するとして、イギリスとフランスに再処理を委託して、すでに45tのプルトニウムを分離し、保有している。また、アメリカとロシア両国には核兵器を解体して取り出したプルトニウムが蓄積している。こうした余剰プルトニウム(excess plutonium)は核拡散防止上障害となっており、軽水炉などの熱中性子炉で燃やしてしまおうとする計画を、日本ではプルサーマルと呼ぶ。電気事業連合会(電事連)は2010年度までに16~18基の原子力発電所で導入を予定していた。1999年秋にイギリス、フランスから高浜原発、福島原発用のMOX燃料が輸送されたが、燃料の検査データがねつ造されたことが発覚、計画が頓挫した。東京電力が柏崎刈羽原発3号機で予定していたものは、刈羽村の住民投票で拒否、福島第一原発3号機で予定していたものは、福島県知事の拒否声明を受け頓挫した。その後、九州電力の玄海原発3号機のプルサーマルが09年12月、四国電力の伊方原発でのそれが10年3月30日に始まった。一度頓挫した東京電力の福島第一原発3号機でのそれが10年10月に開始された。だが、11年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)を受けての事故によって水素爆発が発生し、建屋ごと半壊状態となる。10年12月に予定されていた中部電力の浜岡原発4号機での実施は延期されたうえ、福島第一原子力発電所事故の後、当時の菅直人総理の要請を受けて、運転を停止した。北海道電力の泊原発3号機、北陸電力の志賀原発1号機を含め当初の電事連の計画は達成不可能となった。ウラン燃料用に設計された現在の原子力発電所では、炉心全体の3分の1にしかMOX燃料を装荷できない。だが、Jパワー(電源開発株式会社)は青森県大間にて、炉心全体にMOX燃料を装荷するフルMOX炉(Full MOX core ABWR〈ABWR ; advanced boiling water reactor 改良型沸騰水型炉〉 138万kW)となる大間原子力発電所の14年11月の運転開始を目指してきたが、福島第一原子力発電所事故のため建設工事が中断、現在はようやく新規制基準への適合申請がなされただけで、こちらもいつになったら運転開始ができるのかわからない。