プログラムの「卒業」ルールの厳しさに驚いたが、それでも、誠実に話をする高井さんを見ていると、応援したい気持ちになった。
なぜなら、高井さんには「逆ギレする」という選択肢もあったからだ。
「なんで合法の店に行っただけでDVとか言われて加害者プログラムなんて行かなきゃいけないんだ、みんなやってることじゃないか、ふざけるな」
そんなふうに開き直る選択だってあったはずだ。というか普通、多くの男性は「あなたのやっていることはDVだ」と指摘されるとキレる。もしくは無視する。しかし、彼は「DVはしていない」と思いつつもそれを受け止め、1年間、徹底的に自分を見つめ直した。
私の知人男性に、吉祥さんと同じようにDV加害者プログラムの講師をしている人がいる。その男性に、このプログラムは非常に高い人間性を求めていると聞いたことがある。自らを振り返る作業は決して楽ではないだろう。しかし、たどり着いた先に、生まれ変わった人々が多くいるという。
私はこのような「回復者」の姿に、幾度も感銘を受けてきた。
例えば覚醒剤で逮捕され、自助グループにつながったことで自らを振り返り、今、様々な形で発信している俳優の高知東生(たかちのぼる)さん。高知さんがツイッターで発する言葉が「深い」と評判だが、「仲間」とともに語る作業という意味では、加害者プログラムと自助グループには共通点がある気がする。
高知さんだけでなく、私がこれまでの人生で最も感動させられてきたのは、なんらかの事情で「どん底」に落ち、その後、自助グループなどにつながって復活した「回復者」である。その人たちの言葉は、優しく、深く、鋭く、そして人間への深い理解に満ちている。
高井さんは今回の衆院選で落選したが、当選したら、おそらく日本で唯一の「加害者プログラムを受けた男性議員」だ。ジェンダー問題に対して、どんどん発信してほしい。
最後に。加害者プログラムを受けるべきは、高井さんだけではない。まずは永田町で、全男性議員にプログラムを受けてほしい。最低でも、みっちり1年間。
そこからしか、日本社会は変わらないと思うのだ。