ABCテレビで司会者ジミー・キンメル氏が「MAGA派(トランプ支持者)は容疑者を自分たちの仲間ではないことにしようと必死で事件から政治的利益を受けようとしている」と発言すれば、番組は無期限休止に(多くの抗議の声が上がったことにより6日後、再開)。また自らに否定的な報道をする放送局の放送免許取り消しを示唆し、反ファシズム運動「アンティファ」を国内テロ組織に指定。捜査や解体を進めるよう関係機関に命じる大統領令を発出。また、SNSで生前の氏の言動に否定的に触れた教員などに怒涛のキャンセルが相次いでもいる。
![]()
ざっと日本と世界で起きていることを振り返ったわけだが、ここまで見てきてわかるように、「移民排斥」的な動きは現在、世界のあちこちで起きていることでもある。
日本がヨーロッパと違うのは、外国人の数がわずか3%であるということ。圧倒的に少数だから、この国では一気に移民排斥など進まないだろうと私はどこかで楽観していた。
しかし、空気なんてたった一言である日突然、変わるのだ。
「外国人問題」などなかった頃のこの国を思うと、戦争ってこんなふうに始まるんだな――としみじみ思う。もちろん、今年の5月以前にも在特会デモやクルド人ヘイトなどがあったわけだが、これほど広範囲の人々に、これほどの憎悪――グラデーションの濃淡はあれど――が広がるとは思っていなかった。
そんなことをどこかで予想していたからだろう。私は昨年、自著『難民・移民のわたしたち これからの「共生」ガイド』(河出書房新社、2024年)いう本でこの国で暮らす外国人や支援者、移民の専門家などに取材している。
そこで知ったのは、世界中で移民問題は起きているものの、「この国はこういう形で解決した」というモデルはまだひとつもないということ。私たちは、世界で誰も解き方を知らない方程式を前にトライアンドエラーを繰り返している真っ最中なのだ。
ただ、ここまでの国々で共通するのは、移民排斥の主張が、その国で暮らす人々の不満の受け皿になっているということだろう。
もうひとつ、政治家にとっては、大事なことから目を逸らさせ、手っ取り早く支持率を上げる「金の鉱脈」でもあるということだ。
もちろん、投機など規制が必要なところはすべきである。また、他の国々と違ってこの国は「移民政策はとらない」という政府の建前のもと、外国人を入れつつも言語習得やルール周知などの社会統合策を放棄してきたという問題も見直しが必要だ。
そうした基礎を固めながら、この国がどんなビジョンを掲げるのか。そんなスタートラインから始めるしかないのだろう。
以上、「日本人ファースト」からたった数カ月で、ここまで変わった記録である。
半年後、1年後はいったいどうなっているのだろう? 想像もつかない。