私は何も言えませんでした」
その他、ハシナベゴ(25歳)、ヌルバ(35歳)、シャマル(40歳)。テントにいる女性たちが異口同音に被害状況を語る。それぞれレイプされた現場は家であったり、学校であったり、屋外であったりとバラバラであったが、「行為はどのように……」と聞いた途端、全員が一斉に同じ所作をした。
「目隠しをさせられたのです。身に付けているヒジャブ(ムスリムの女性が頭髪を隠す布)をこのようにして」
犯人がどんな顔なのか分からないようにした後に、複数の男が次々と犯行に及ぶ。レイプ犯が誰なのか、何人いたのか、不明にしてしまう。組織で共有されているマニュアルがあるかのような、画一的な集団暴行である。組織的に異民族をレイプして強制出産をさせた、ボスニア紛争時の戦争犯罪を思い出した。
彼女たちもまたラカイン州への帰国を願っている。しかし、人間の尊厳を踏みにじった犯罪者たちが、検証も訴追もされずに居座っている場所に、どうして帰ることができようか。ミャンマー政府が発信する難民の帰還の受け入れとは、今のままでは「セカンドレイプ」どころか、第3、第4のレイプの容認に他ならない。
ラカイン州
ミャンマー西部に位置し、西はベンガル湾、北はバングラデシュに面する州。