旅客機の中で、乗客が客室乗務員に文句を言っている。機内食に不満があった上に、到着が遅れることが分かって、不満が爆発したらしい。収入の中から安くはない運賃を捻出して旅客機に乗っている乗客としては、サービスが悪かったり、大きく遅れたりすれば、不満が高まるのも当然だ。
日本国民も今、大変に高い運賃を払って旅客機に乗っている。日本経済を1億2000万人が乗る旅客機と考えよう。すると、その運賃に相当するのは税金や社会保障費などであり、政府はこれを使って旅客機を運航し、機内サービスに相当する様々な行政サービスを提供している。
それでは、国民の負担はどの程度なのか…。それを示す指標の一つが、「国民負担率」である。
国民負担率は、国民が支払う税金と社会保障費の合計が、国民所得に占める割合を示す。つまり、日本経済という旅客機の運賃に、国民が自らの収入の何%を支払っているかを示すデータなのだ。
財務省によると、2008年度の国民負担率は、40.1%になる見通しだという。前年度より0.1ポイント上昇、5年連続の上昇で過去最高を更新している。日本国民は、収入のおよそ4割という運賃を支払って日本経済という旅客機に乗っていて、しかも、その運賃は年々上昇しているのである。
さらに、本当の「国民負担率」はもっと大きいという指摘もある。日本は国と地方でそれぞれ巨額の財政赤字を抱えている。これを加味した「潜在的国民負担率」を算出すると、43.5%に達するというのだ。
4割を超える国民負担率に、日本経済という旅客機の運賃はとてつもなく高いと思いがち。ところが、日本の国民負担率は、先進諸国の中では低い方だ。諸外国の国民負担率(05年)は、スウェーデンが70.7%、フランスは62.6%、ドイツは51.7…。多くの国で、収入の半分以上が、「運賃」に消えているのである。
ただし、これらの国では福祉や生活保障が充実しているため、負担が重い一方で、行政サービスを受ける場合の追加の支出は少なくて済む。国民という乗客は、手厚い「機内サービス」をほぼ無料で受けることができるのだ。
これに対して、日本では福祉や生活保障の制度が薄く、別に料金が必要になる場合が多い。諸外国に比べれば「運賃」は安いが、その分サービスも悪く、おしぼりをもらったら100円、客室乗務員を呼んだら500円という具合に、何かにつけて「追加料金」を請求されるのが日本なのである。
収入の4割という運賃を支払って、日本という巨大な旅客機に乗っている日本国民。税金の無駄遣いや非効率な行政システムなど、そのサービスは運賃に見合ったものとはとうてい言えない状況だ。
「高い支払いに見合った行政サービスを提供して欲しい。それがダメなら、税金という運賃を下げろ!」。国民という乗客の不満は、日々高まっている。