「酒税」の歴史は古く、課税する側と支払う側との間で、様々な攻防が繰り広げられてきた。中世に始まったとされる日本の酒税は重要な財源となり、明治時代の「酒造税」を経て、現在は「酒税法」による運用が行われている。
酒税は国が徴収する「国税」で、数量に対して課税する「従量課税方式」が採用されている。酒を「発泡性酒類」「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の四つに分類した上でさらに17品目に細分化、それぞれに税率が定められるという複雑な体系を持つ。
酒税は増税が容易な税金だ。お酒は生活必需品ではなく嗜好品。過度な飲酒は健康を害し、酔っ払いが社会秩序を乱すこともあり、道徳的観点からも増税は理解を得やすかった。
明治政府は酒税に大きく依存していた。財政難から断続的に増税を実施、税収額は1899年に地租を抜いて国税収入の第1位となり、1902年には租税のうちの約42%を占めるまでになる。平成の現在も、毎年のように引き上げが検討されるなど、「困った時の酒税頼み」の状況が続いているのだ。
しかし、安易な酒税の増税は生産者を苦しめる。企業努力で価格引き下げや品質向上を実現させても、酒税の引き上げによって帳消しになってしまう。このため、酒税をいかに軽減するかが、生産者の最重要課題となっている。
その典型がビール、350ミリリットル当たりの酒税は77円(2014年4月現在)と高水準だ。そこでビールメーカーは、酒税が47円となる「発泡酒」を投入、さらには麦芽以外の原料を用いた「第3のビール」を開発し、酒税を28円まで下げることに成功する。これに対して政府は、発泡酒が売れ始めるとその税率を引き上げるなど、両者は激しい攻防を展開してきた。
サッポロビールの「極ZERO」を巡る問題もその一つだ。13年6月、第3のビールとして発売された「極ZERO」は、低価格なだけでなく、独自の製造技術で「プリン体ゼロ」「糖質ゼロ」を実現し大ヒットした。しかし、14年1月になって国税当局から第3のビールに該当しないと指摘され、サッポロビールは酒税の差額分116億円を支払った上に、発泡酒として「極ZERO」を再発売することになった。
企業努力を認められなかったわけだが、「極ZERO」は、健康志向の消費者に支持され、その後も売れ続けている。税金逃れがウイスキーを琥珀色にしたように、酒税軽減の試みが、ヒット商品を生んだのだ。
様々な思惑に左右されてきた結果、現在の酒税は複雑かつ不公平になっている。税金対策ではなく、消費者が喜ぶ安くておいしいお酒の開発を促進させるように、酒税制度を改革する必要があるだろう。