「グローバルスタンダード」は、ビジネスにおけるサッカーのルールのようなものだ。ビジネスには、各国の事情に応じて様々なルールがある。国内だけでビジネスが展開される場合には、それでも問題はない。しかし、国境を越えたビジネスを展開する場合には、効率が低下したり、様々なトラブルが生じたりする恐れもある。そこで、世界共通のルールが求められるようになる。これがグローバルスタンダードなのだ。
グローバルスタンダードが最も進んでいるのが、企業会計の分野。企業の経営状況を示す決算などの会計基準については、国際基準審議会(IASB International Accounting Standards Board)がグローバルスタンダードと考えられるルールを定めている。サッカーのスコアブックに相当するのが会計基準であり、これにグローバルスダンダードを導入することで、企業というサッカーチームが強いか弱いかを、世界中の人が同じ基準で判断できるというわけだ。
金融にもグローバルスタンダードが浸透している。株式市場や債券市場など取引方法は、国によっていくぶんルールが異なるものもあるが、おおむね世界共通。ROE(自己資本利益率)やPER(株価収益率)など、株価を判断する基準も同じである。
グローバルスタンダードが最も徹底されているのが外国為替取引だ。世界中のディーリングルームが24時間結ばれ、導入されている取引端末も取引用語も共通。東京市場のディーラーは、ニューヨークでもロンドンでも香港に行っても、全く同じ環境で取引を即座に始めることができる。Jリーグでプレーしていた日本人選手が、イタリアのセリエAに移籍した直後から試合に出られるのと同じことであり、イタリア語はできなくても、サッカーのルールも用語も共通で、全く困ることはない。
工業の分野でもグローバルスタンダードが拡大している。電気の分野では国際電気標準会議(IEC International Electrotechnical Commission)、それ以外は国際標準化機構(ISO International Organization for Standardization)が国際的な標準を作成し、国際的な生産現場での効率アップが図られている。
世界中に広がりつつあるグローバルスタンダードだが、批判も根強い。主導しているのがアメリカで、その都合の良いようなルール、つまり「アメリカンスタンダード」を押しつけているというわけだ。サッカーのルールを統一するように見せかけて、実は同じフットボールでも、アメリカでしかプレーされていない「アメリカンフットボール」を、強引に世界に広めようとしているのではないのか?という批判なのである。
批判にさらされることもあるグローバルスタンダードだが、その拡大がまだまだ続くことは確実だ。世界を相手にしたビジネスを展開する以上、「サッカー」であれ、「アメリカンフットボール」であれ、そのルールに従わざるを得ないのが現実なのである。