「OPEC」も圧倒的な力を背景に、好き勝手な振る舞いを続けてきた。OPECは「石油輸出国機構」の略称で、その名が示す通り原油の産出国によって組織されている。2014年現在の加盟国はサウジアラビアを中心にクウェート、ベネズエラなど12カ国で、その原油生産量は世界の4割以上を占めている。
産出国の利益を守るのがOPECの目的だ。原油市場で大きなシェアを持つことから、OPECが減産を行えば原油価格は上昇し、増産を決めれば下落する。OPECは加盟国が産出量を話し合いで決定することで原油価格をコントロールし、より大きな収入を得ようとしているのだ。
生産者が価格や供給量を示し合わせて決める「カルテル」は、自由競争を阻害し消費者の利益を奪う違法行為であり、独占禁止法などによって禁止されている。しかしOPECは例外で、違法なカルテルを堂々と行い世界の国々を翻弄(ほんろう)してきた。原油価格が一気に4倍に引き上げられた1973年の「第一次オイルショック」はその典型だが、2008年7月に国際的な原油価格の指標である、アメリカテキサス州産の原油、WTI(West Texas Intermediate)の原油先物価格が147.27ドルまで暴騰した背景にもOPECの存在があった。しかし、圧倒的な力を持つOPECにどの国も文句を言えず、じっと耐えるしかないのが現実だった。
ところが最近は、OPECの支配力に陰りが見え始めた。「オイルシェール」というライバルが出現したのだ。オイルシェールは、「シェール」(頁岩)と呼ばれる泥岩の層に含まれている原油で、技術の向上で採掘コストが低下し、通常の原油と勝負できるようになった。その埋蔵量は原油を上回るとの試算もあり、主要生産地であるアメリカでは「シェールオイル革命」が起こるなど、OPECの対抗勢力となっている。さらに、ロシアなどOPECの非加盟国の原油生産も増加してきたことから、その支配力が低下しているのだ。
OPECはこれまで、原油価格が下落すると原油を減産することで価格を下支えしてきた。しかし、ライバルが出現した結果、減産すればシェアを奪われることから、カルテルによる価格支配が難しくなっている。
原油価格が下落する中で開かれた14年11月のOPEC総会でも減産が話し合われたが、結局断念せざるを得なかった。これまでは戦わずして原油市場を支配してきたOPECが、「価格競争」を余儀なくされたことで、原油価格は急激な下落を見せる。強力なライバルが登場したことで、OPECという「不良グループ」は、好き勝手なことができなくなっているのだ。
OPECの支配力低下によって原油価格が暴落、これが産油国ロシアの通貨ルーブルの暴落など資源国経済を直撃し、「逆オイルショック」と呼ばれる不安定な状況を生み出している。OPECという「不良グループ」の支配から解放されたものの、今度は産油国同士の抗争に巻き込まれて、原油消費国まで思わぬケガをする恐れも出てきている。