「移民政策はとらない」と政府は強調してきたのに、実際には増え続ける外国人。建前のせいでマトモな統合策も取られず、さまざまな問題は地域社会に丸投げされる。長期的なビジョンもなく、振り返ればバブルの頃には非正規滞在者を容認し、その後は実習生や日系ブラジル人を「単純労働力」として使い、また外国人研修生・実習生への人権侵害も指摘されてきた。
一方、受け入れを拒む人々は治安の悪化などを移民と結びつけ、「欧米の轍(てつ)を踏むな」といった理由で反対の声を上げている。

是川夕氏
このような状況について、是川さんは毎日新聞のインタビューで以下のように語る。
「排外主義的な人もリベラルな人も、『日本には移民政策がない。無為無策だ』という認識では実は一致しています。であるが故に、一方は『なし崩し的だから受け入れをとめろ』と言い、片や『統合政策がないから作れ』と言っているわけです」(「『欧米を反面教師に』と言うけれど 移民巡る比較がナンセンスなわけ」毎日新聞2025年12月23日付)
そして今必要なのは、「まずはこれまでの取り組みを『移民政策』という言葉で振り返ること」と指摘する。
また『ニッポンの移民』には、「機能的・制度的には日本も移民政策を有して」いるという記述もある。
「国際比較データによれば、日本は特に『労働移民』を中心に永住型・一時滞在型双方で国際的に見ても相当規模の移民を受け入れている。また、その労働移民政策は他国と比較して永住型移民の占める割合が大きく、むしろ日本はリベラルな『労働移民国家』と評価される」
いったい、どういうこと? 戸惑いをぶつけると、是川さんは言った。
「ファクトベースで言いますと、労働を目的とした在留資格による受け入れは、日本は世界で7位です。1位のアメリカと比べても、3倍弱くらいの差しかないという大きな事実があります」
全然そんなイメージなかったが。では、「リベラルな労働移民国家」とは?
「労働移民政策において、他の先進国では受け入れる労働移民の9割以上が期限つきです。一定期間以上受け入れたら、それ以上は延長できない。いわゆる『使い捨て』が国際的なスタンダードですが、日本は先進諸国中、イギリス、カナダに次いで3番目に労働移民を永住型として受け入れる割合が高い国なんですね」
ねぇ知ってた? 私の中にあった「常識」が、音を立てて崩れていく。
ちなみに2023年の1年間に日本が受け入れた「永住型移民」は約15万5000人。これは先進国で第10位だ(前掲書)。永住型移民はその類型として「労働」「家族」「人道」「自由移動」などに分けられるそうだが、そのうち、「労働」ルートでの受け入れは58.2%。帯同家族も含めると、実に83.8%。この値は先進国中ダントツのトップだという。
ちなみにアメリカで「労働」ルートの人が占める割合は6.9%、カナダ30.7%。ドイツ13.5%。
ではどのような移民が多いのかというと、アメリカでは66.1%を占めるのが「家族」。「労働」と「帯同家族」は合わせても13.6%。「人道」が10.6%。次いで「その他」9.7%だ。このことは、何を示しているのか。
「欧米と日本はそもそも受け入れルートが違い、欧米は労働ルートではほとんど受け入れをしていません。では何かというと、家族や親戚がいるなどコネで来る人が多いんです。先に誰かが現地に行って、家族が呼べるくらいには成功しているなどの事例です」
アメリカで、「家族」での受け入れがダントツな理由はこれだ。
「欧米ではこのような家族移民が多いんです。もうひとつ、元植民地から来ている人も圧倒的に多い。また、中南米はアメリカとの経済・社会的な結びつきがもともと強い。実質、社会の中はあちこちにトンネルが貫通してるみたいにつながっている。ヨーロッパ諸国なんかは旧植民地の人は独立時に国籍選択の権利を与えられていることが多い。こういう状況だと、全く知らない外国に働きに行くという感覚ではないんだと思います」
また、旧植民地出身者は旧宗主国への移動の権利を持っていることも多く、欧州の人々にはEU圏内の自由な移動を可能にするシェンゲン協定に基づく権利がある。
「なので欧米の議論を持ってきて、同じようなことが起きるというのは無理があります」
それでは、日本に来る外国人はどのような人なのだろう。
「コネでは来られないので、ある意味実力主義。自分の能力と意欲で来る人たちです」
ちなみに2025年6月時点で日本にいる外国人の在留資格の内訳は、多い順に並べると以下のようになる(出入国在留管理庁「令和7年6月末現在における在留外国人数について」)。
1 永住者 93万2,090人
2 技術・人文知識・国際業務 45万8,109人
3 技能実習 44万9,432人
4 留学 43万5,203人
5 特定技能 33万6,196人
「リーマンショックの前くらいまでは日系人や、日本人男性と結婚したアジア人女性が多かったんですが、リーマンショック頃にガラッと変わって、経済的な在留資格が上位を占めるようになりました」
ちなみに外国人技能実習制度と聞くと、「時給300円」「借金を背負わされ、パスポートを取り上げられて奴隷労働」などが浮かぶが、現在はどのような状況なのだろう。
「2010年以前の技能実習制度は、労働者扱いとなるのは2~3年目の『技能実習生』になってからで、1年目はあくまで『研修生』扱いなので支払いは『手当』のみ、したがって最低賃金の適用もありませんでした。17年以降は実習生を受け入れる管理団体が許可制になり、外国人技能実習機構ができて立ち入り検査もできるようになり、不正に厳しくなりました。OECDの評価でも、2010年と17年の制度改正を経て以降の技能実習制度というのは、それ以前とは大きく異なると言われています」
以前は仕事を変わることもできなかったが、現在はパワハラや未払いなどがあれば転籍できる。が、2020年代に入っても、実習生の失踪という話は耳にする。
「そうですね。ただ失踪率は2%くらいです。もちろんゼロにするのが大事なんですけど、類似の国際的なプログラムと比べると、日本の失踪率は5分の1か6分の1。他の国ではだいたい10%を超えています」
実習生などへの人権侵害はこれからも注視していきたいが、私がこの問題を知った2000年代より、状況は改善されているようである。