そんな技能実習生が働く職種は製造業から農業、漁業、水産業、建設業、食品加工業など多岐にわたる。
■移民受け入れに舵を切った2018年の法改正
ここでアジアの若者が日本に来たいという時のパターンを紹介しよう。
「技能実習・留学・技人国(技術・人文知識・国際業務。界隈の人は「ギジンコク」と略す)はお互いちょっと重なっていて、お金に余裕がある人は留学で日本に来ます。一方、技能実習で来る人は、進学や留学がしたいもののお金がないケースが多いですね。技能実習で3年間働くと200万円くらい貯金ができるので、それを元手に次は留学で来る。私が実施してきた留学生向けの調査によると、ベトナムなど技能実習生が多い国だと、留学生の8%くらいが元実習生。それで日本で2年間日本語学校に通い、アルバイトしながら日本の専門学校を卒業して就職する。日本はそういうチャンスを得られる場として見られているんです」
ちなみに日本人がアメリカに留学した場合、アメリカで就労ビザを取るハードルは非常に高いという。が、日本では留学生が日本で就活し、日本企業に入ることができる。「そこは世界的に見てもめちゃくちゃ特殊」なのだそうだ。
そうして晴れて就職すれば、在留資格は「留学」から「技人国」に切り替わるという仕組みだ。そうなると、永住権申請もゆくゆくは可能になる。
もうひとつ、永住への道が開かれる大きな法改正(入管法改正)が2018年にあったことをご存知だろうか? これにより、19年4月から特定技能制度が始まる。「技能移転を通じた国際貢献」という名目があった技能実習制度とは違い、国が人手不足と認めた分野で即戦力となる外国人の就労を認める制度だ。職種は介護、ビルクリーニング、製造業、建設、自動車整備、航空、宿泊、鉄道、外食業など多岐にわたる。
この制度、最初は「特定技能1号」として5年間受け入れ、その後、技能検定1級などの合格を経ると在留資格の更新に上限がなく、永住資格の申請も可能で家族も呼べる「特定技能2号」へ移行する仕組みだ。単純労働者の受け入れ、しかも永住資格へとつながるこの受け入れは「ダムの決壊」と呼ぶ人もいるくらい、大きな政策の転換だった。
同時期、技能実習生にも永住につながる道が開かれた。技能実習制度が特定技能制度に接続・延長されたのだ。是川さんはこれを「『技能形成を通じた移住』という国際的に見ても珍しいスキーム」と指摘する。
こういうことを知ると、18年は日本が「移民受け入れ」に大きく舵を切る瞬間だったわけだが、この時の国会で安倍元総理が口にしたのが「日本は移民政策をとらない」。
23年、難民申請を3回以上した人が強制送還の対象になりえるという入管法改正が行われた時には大きな注目が集まったが、18年の改正がこれほどの大転換だと当時、どれほどの人が認識していただろう。
この時、国会ではどんな議論がなされていたのかと思い調べてみると、共産党などは実習生への人権侵害などを理由に反対。また当時、自由党だった山本太郎議員も改正案に反対して「ひとり牛歩」をしている。
しかし、多くの国民にその内容はほぼ理解されないまま入管法は改正され、成立・施行された。そして日本は世界でも珍しい形で移民への門戸を開いたのである。

雨宮処凛氏
■昨年までマトモだった総合的対応策
そんな2018年、こっそりと策定されたのが「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(以下、「総合的対応策」)。「移民政策はとらない」とする一方で、政府は受け入れ体制を整えようとしていたのである。
「特定技能制度ができて、入管庁が作るようになりました」(是川さん)というこの指針は、日本の「統合政策」にあたるものだという。
統合政策とは、是川さんの説明によると「生活保護や国民皆保険への加入などの社会保障や、裁判を受ける権利など司法システムへのアクセスといった基本的権利の付与に関する政策と、語学研修や公営住宅への入居など、より積極的な介入にかかわるものの2つに分けられる」。移民がその社会に統合されるためのもろもろで、「国境管理」「入国管理/在留政策」「出国政策」と並び移民政策の根幹をなす。
そのような統合政策が18年にできていたことを、どれくらいの人が知っていただろう?
ちなみに国際的に見ると、社会統合策の主要な部分は労働政策だという。他の国では仕事がない状態で来る移民が多いので、まずは労働市場に包摂されることが課題となる。が、日本の場合、そこをクリアしている人が多い。
そんな総合的対応策だが、今年1月23日に発表されたものは私の周りでかなり話題になったので知っていた。
内容はといえば、日本国籍取得や永住許可の厳格化、土地取得のルールのあり方、外免(外国運転免許証)切り替えの厳格化などが盛り込まれている。また、外国人の生活保護については「適正化」という記述もある。まるで現在、不正受給が蔓延(はびこ)っているかのような書きぶりが気になる。
もちろん、外国人による投機や土地取得などへの規制は一定必要だろう。が、ことさらに不安が煽られているような気がして仕方ない。なぜなら総合的対応策の「概要」で示された「基本的な考え方」の1行目は以下の文言だ。
「一部の外国人による、我が国の法やルールを逸脱する行為・制度の不適正利用について、国民が感じている不安や不公平感に対処する必要」
高市総理の施政方針演説と酷似している。が、それがどのような行為であるかについては触れられていない。私は常々、外国人問題は今後、刑法違反と入管法違反とゴミ出しなどのルール違反が意図的に混同されて語られるだろうと指摘してきたのだが、まさにそのようなやり方ではないか。
そして「国民が感じている不安や不公平感」という言葉。しかし、前年比でこれだけ不安や不公平感を感じている人が増えているなどのデータなどはどこにも示されていない。
そんな総合的対応策、是川さんの本を読んで18年から毎年取りまとめられていることを知り、18~25年のものを読んでみたのだが、腰を抜かすほど驚いた。非常に「マトモ」だからだ。
例えば18年バージョンの「概要」冒頭には、「外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取組とともに、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備を推進する」とある。