09年には「そう思う」「ややそう思う」合わせて36%だが、以降、一貫してその数は減り続け、21年には26%に。そして今回も29%と微増にとどまった。この数年、日本の人手不足を痛感し、また外国人労働者が目に見えて増えても「日本人の仕事が取られた」と感じる人が少ないことが原因だろう。
一方、ポジティブな意見への回答はどうか。
外国人が増えると、「日本社会が活性化する」に「そう思う」「ややそう思う」と回答したのは21年では42%。13年以降は概ね同程度の割合だったが、今回は36%とダウン。
また、調査では国籍別の項目もある。「〇〇人が増えること」に「賛成」「やや賛成」「やや反対」「反対」を問うものだ。「〇〇」には国籍が入るのだが、これについてはその時の情勢に左右されてきたと田辺さんは指摘する。
「例えば11年は中国との間で尖閣問題が起き、韓国との間で竹島問題が起きた年ですが、その前後では一気に中国、韓国に対する態度が変わっています」
09年の調査では、「(あなたが生活している地域に)中国人が増えること」に「反対」「やや反対」なのは合わせて66%だったのに対し、13年には76%にまでアップ。以降、微減し続けるのだが、25年の調査では衝撃的な結果となった。なんと「反対」「やや反対」は86%にまで急増するのだ。「賛成」「やや賛成」はわずか9%。
韓国の方はと言えば、「(あなたが生活している地域に)韓国人が増えること」に「反対」「やや反対」は09年で56%。それが竹島問題後の13年には67%にまで上がる。その後微減を続けるのだが、25年には71%にまで増える結果となった。
一方、ベトナム人に「反対」「やや反対」なのは21年46%だったのが、今回の調査では67%に激増。
アメリカ人はどうなのか。
「(あなたが生活している地域に)アメリカ人が増えること」に「反対」「やや反対」なのは21年で31%。が、25年には43%となっている。
ドイツ人の場合は「反対」「やや反対」なのは21年で33%。それが25年には49%まで増えている。
これらの結果から、外国人全般への苦手意識が急激に高まったことがうかがえる。
が、国別の傾向も明らかにある。例えばアメリカやドイツの人々に対しては「地域に増えること」を「やや賛成」と回答する人が09年から25年まで、一貫してもっとも多い。一方で、中国、韓国の人が増えることには一貫して、「やや反対」と答える人が多いのだ。
「やっぱり日本には、西高東低、西洋の人々を上に見て、東の国々の人たちを下に見る傾向があるんですね」
もともとあったそんな傾向に、「日本人ファースト」以降の空気は、この国の何かの「タガ」を外した。今まで「公には言ってはいけないこと」だったこと――例えば「外国人がのさばってる」「あいつら調子乗ってる」というような言葉――が、急に解禁されたような空気は確かにあったし、今もある。
「社会への語りが一人歩きして現実を作ってしまう場合もあります。人々の心からの意見が動くというより、みんなが周りを見て動くんですね。よって、排外主義者が急に増えるわけじゃないのに、増えているような空気が作られると排外的なことを表明する人が増えるんです。これが怖い」

田辺俊介氏(左)と雨宮処凛氏(右)。調査結果を一つひとつ確認しながら。
■動画共有サービスと外国人叩きの恐ろしいほどの親和性
さて、今回の調査結果にはもうひとつ、衝撃的なデータがある。それは先ほどの「見ている情報空間の違い」についてのもの。質問は、以下だ。
「政治や社会の問題に関する情報の入手先として、以下のものをどの程度利用されていますか」
その中で、YouTubeやTikTokなどの動画共有サービスを「よく使う」人と特定の回答に密接な親和性があったのだ。
例えば「(外国人が増えると)日本社会の治安・秩序が乱れる」に「そう思う」と回答した人の46%が動画共有サービスを「よく使う人」。「ややそう思う」も合わせると81%だ。
また、動画共有サービスを「ほとんど使わない」人の場合、「治安・秩序が乱れる」に「そう思う」と答えたのは、「よく使う」の半数の20%だった。
次に「(外国人が増えると)生活保護などの社会保障費用が増える」という質問についても見ていこう。
これに「そう思う」と答えた人の39%が動画共有サービスを「よく使う人」。「ややそう思う」も合わせると74%だ。一方で動画共有サービスを「ほとんど使わない」人の場合、「社会保障費用が増える」に「そう思う」と答えたのは、「よく使う」の半数に満たない17%だった。
田辺さんは言う。
「やっぱりこの結果を見ると、ネットで情報を得る人ほど、話題になったデマを本当に信じているようです。よく使う人とほとんど使わない人を比較すると、どちらの質問も15ポイントくらい差がある。これは年齢別で分けても同じ傾向が出ます。つまり、若い人、高齢者がどうこうという話ではなくて、動画共有サービスを使っている人ほど外国人のネガティブな情報に触れている。脅威だ、危険だという情報の方が圧倒的に流通量が多いので、普通に使っているだけであっても、そっちの言説に引っ張られてしまう。ここまで綺麗にポイント差が出ることって少ないので、そう言えると思います」
SNSや動画共有サービスの発達は、人々の思考さえハックしているのだ。それがこうしてデータで明らかになると、その事実に戦慄する。
「外国人は治安を乱す、生活保護にタダ乗りみたいな情報が急激に増えたので、何気なく見ているだけでもそういう世界観になり、強く信じてしまうのだと思います」
そんな外国人ネタが「バズる」と一部の人々が気づいたきっかけのひとつは、23年から始まったクルド人ヘイトだろう。
「奈良の市議の方なんかはまさにそうですが、それまで迷惑系ユーチューバーをやってた人が、外国人を発見したというのはありますね」