*「この国で、「女子」でいることはかなりしんどい。その1」 からの続き
フェミニズムとか、ジェンダーとか、女子に向けられる「呪いの言葉」とかについて3人で話してみた! 話題は最近のセクハラ問題から、日本の女性の置かれている状況について。
雨宮処凛さんの著書『「女子」という呪い』の刊行を記念して行われたトークセッション(2018年5月22日に実施。@神楽坂モノガタリ)。漫画家・ライターとして活躍する田房永子さん、作家・ラブピースクラブ代表の北原みのりさんをゲストにお迎えした。昨今のいろいろなセクハラ、#MeToo問題をテーマに話は盛り上がり、会場はヒートアップ! その1 から引き続き、3人のトークをお届けします。
女性がイヤな気分になって終わり。それでは、何も変わらない
(最近のセクハラ問題の話題が続いて――)
雨宮 TOKIOの事件はどうですか。
北原 TOKIOの山口メンバーが46歳っていうのに驚きました。30年間芸能活動やっていて、40~50代の男に求められるのが成熟した大人であることよりも、少年であり続けることとか若さで、そういう点がまだ芸能界では評価されている。昔だったら、46歳の歌う男性グループって、ダークダックスだよ。
田房 確かにそうだ。
北原 成熟したおじ様であるべき世代が、若さとか幼稚さとか少年性とかを売りにして、恥ずかしくないような社会になっちゃっているんだなって思った。
雨宮 ほんとですよね。
北原 いろいろ幼くなっているのかもしれないですよね。私はアラーキーのことが今、とても気になっているんだけど。写真家アラーキーとそのモデルさんの話について、メディアがほとんど取り上げない。
田房 やっぱり女の人がイヤな気分になって終わり、なんでしょうか。(これまでは女性たちが)イヤでも仕方ないじゃん、とされてきた。それが最近は、やっぱりイヤなんだ、問題化して声を出さなくちゃ! という動きになっていることは、すごく感じています。
北原 声を上げて叩かれるのであれば、黙っておいた方がいいかなと考えるのは仕方ないと思う。でも、それって、叩かれた人を、遠巻きに見ている人たちの数が多いからなんですよね。仲間の沈黙の方が怖かったりする。
雨宮 セクハラや#MeTooが話題になると、どうしたら社会が変わるのかみたいな話によくなるじゃないですか。でも、もう麻生(太郎)さんとかは無理だと思うんですよ、何を誰がどう話しても変わらない。
北原 77歳でしょう、あの人……。「ファッションヤクザ」なんだよね。
雨宮 だから、そういうご老人たちには言うのを諦めたとして、どの年代の男の人から(セクハラ問題や女性のことを理解してもらうように)対話していくことを始めるかが問題ですよね。私の同世代なんかでも、……43歳ですけど、もう二分化していると思います。9割は「昭和のオッサン」まっしぐら、1~2割がイクメンとかに目覚めている(女性に対して)理解のある人になれるかな。若い世代は少し変わりつつあると思うんですけど。
セクハラなどの加害者になってしまう「昭和のオッサン」的な男性に対して、どう(人権的な知識や理解を深めてもらうために)言えばいいのか。そのことを話し合っていると、だいたいが「男を立ててあげて、(できたことに対して)褒めて、育てる」という話が出てくる。そこまで女性たちがしなくちゃダメですか? サービスして? じゃ、(私たちに)時給払えよっていう気持ちになりますよ。
田房 時給くれたらちょっと考えるかも! 「立てて、褒めて、育てる」って本当にその場しのぎの逆効果ですよね。それを(女性たちから)されてきたから、オジサンは、「自分の感情が分からない」という病が重症化してる気がする。もし時給がもらえるとしたら、私の具体的な対策は、何かが起こった時に言語化してあげる作戦。それもオジサンの方に、(こちらの話を)「聞こう」という前提がないと成り立たないから、幻想なんだけど。
でも以前に、電車の中で女性を怒鳴り付けた男性に遭遇した北原さんが、騒ぎが大きくなった時にそのオジサンに「怖かったの?」と聞いたら、「怖かったんだ」とうるうるし始めた――と話してましたよね?
北原 うるうるしているオジサンを目の前にした時でも、ここで(その人が女性に対して)怒鳴ったことを許しちゃいけないと思いました。だから、「女はね、殴られたり、いきなり怒鳴られたりすることに日常的に怖い思いをしているの。だから、ここはやっぱり謝った方がいいんじゃない?」と言いました。そしたらオジサンも、自分の気持ちを自分から話し始めた。
雨宮 ほんと「ボク、どうしたの、言ってごらん、言葉にしてごらん」から始めるしかないのかしら?
北原 それを結論にしたくはないですけどね。
写真家アラーキーとそのモデルさんの話
2018年4月に、写真家荒木経惟氏の作品のモデルを長年務めていた女性が、被写体となっていた時期の荒木氏との関係、撮影について契約書や同意書がなかったこと、周囲からの嫌がらせ等から精神的苦痛を受けたとネット上で告白した。