これを土台として、世界中のおよそありとあらゆる他の金利の水準が決まるのです。ライボーが上がれば、玉突き的にその他諸金利の水準が上がる。ライボーが下がればその逆です。
この究極の金利ともいうべきライボーを巡って、不正申告があったらしい。そのことで、大騒ぎになっていることはご承知の通りです。
ライボーは、ロンドンで取引している大手金融機関の自己申告の平均値です。イギリス銀行協会がその集計に当たっています。この自己申告について、名うてのグローバル・バンク、バークレイズに不正容疑がかかっているのです。自行の資金調達金利を、過少申告していたのではないか。そう疑われています。
しかも、この過少申告は、もしかするとイギリスの中央銀行であるイングランド銀行の指図によるものかもしれない。そんな疑念も飛び出しています。
話は、リーマン・ショック時のことです。イングランド銀行は、大手銀行の資金コストが急騰していることを、明るみに出したくなかった。だから、バークレイズに圧力をかけたのではないか。そのように取りざたされています。
以上が事件の概要です。それ自体として、大事であることは間違いありません。ですが、それはそれとして、筆者にとって改めて感慨深いのが、このライボー方式という金利決定のやり方の歴史的背景です。
なぜ、ロンドンなのか。なぜ、自己申告なのか。この二つの疑問への答えは一つです。それは「ザ・シティ」の一言です。
ザ・シティとは、すなわちロンドン金融街の意です。こここそ、近代金融史発祥の地です。ここから、今日ある金融取引のすべてが始まりました。だからこそ、ライボーがすべての金利の原点におかれているわけです。
そして、シティには、当初からの大いなる伝統があります。それは、「我が言葉は我が誓いなり」です。金融の基盤は信用です。信用を取り扱うシティの紳士たちに、二言はない。だからこそ、ライボーは自己申告なのです
もしライボー疑惑が真実なら、そのことをもって、シティはシティでなくなる。そして、金融から信用という名の基盤が消える。そういうことになります。信用出来ない金融。これほど、怖いものはありません。