新興諸国といえば、その勢いはとどまることを知らず。そう思われてきました。中国やブラジルやインドがすぐ頭に浮かびます。最近では、インドネシアやトルコや南アフリカも、新興勢の一員として、グローバル経済の希望の星と目されるようになりました。その彼らの先行きが、ここに来て危うくなっているというのです。なぜでしょう。
実をいえば、答えは簡単です。
端的にいって、彼らは、この間、ずっと人のふんどしで相撲を取ってきました。借り物ふんどしの主成分は、カネでした。デフレの先進諸国から、大量にカネが流れ込んでくる。カネという名のこのふんどしの力を借りて、新興諸国は、実力以上の相撲を取ってきた。そういうわけです。
それを可能にしてきたのが、いわゆる「キャリートレード」です。すなわち、低金利国で借りたカネを高金利国に投資して、利ザヤを稼ぐ取引です。
「キャリー」は「持ち運ぶ」の意です。ある金融資産を持ち運ぶことで、投資家はどれだけの収益、すなわちお土産を手に入れられるのか。どれだけのコスト、すなわちお荷物を背負うことになるのか。そこを天秤に掛けて行う取引だから、「キャリートレード」と呼ぶのです。
ゼロ金利の先進国で資金を調達すれば、キャリーしなければいけないお荷物はゼロです。その資金を高金利の新興国に運べば、ステキなお土産を手に入れることができるわけです。しかも、お荷物無しなのですから、輝くお土産は全く無傷で丸ごと我が物になるわけです。
こういうカラクリですから、先進国から新興国へと流れるキャリートレードは、すっかり隆盛を極めることになりました。特に、量的緩和を大規模に展開するアメリカから、大量の資金が新興諸国に運び込まれたのです。ところが、ここにきて、アメリカの量的緩和は出口に向かおうとしています。つまり、持ち運ばなくてはならないお荷物が、増えようとしているわけです。
そうなってくると、キャリートレーダーたちは心配になります。お荷物の方が、お土産より重くなったらどうしよう。そうなっては大変だ。そうならないうちに、早くお運び取引は手じまいに入った方が良さそうだ。彼らは、今、そう考え始めているでしょう。
全ての投資家が手じまいの決意を固めてしまったら大変です。その時、借りたふんどし頼みの新興諸国にとっては、まさに万事休すの場面が到来することになります。
借りたふんどしを奪い返されて、一糸まとわぬ姿となった時、新興諸国はどうするでしょう。目が離せません。
もっとも、赤裸を凝視するのは、少々つらくはありますが。