この新しい目標時期との関係で、ひょっとすると攪乱(かくらん)要因になりそうな話題があるのです。それは、折しも、16年7月に向けて、消費者物価指数の集計方法が改定されるということです。この改定が実施されれば、消費者物価指数を構成する品目の顔触れや比重が変わることになります。
この改定は、5年ごとに実施されます。人々の消費構造の変化を、物価指数に的確に反映させる。それが、この改定作業の狙いです。今回の改定では、例えば、青汁が新項目として組み込まれ、家のリフォーム関連費は比重が上がります。一方で、アイロンは指数構成項目から外されて、私立大学の授業料は比重が下がるということになる予定です。
アイロンが青汁に追い出されるというのは、実に世相を反映していると言えるでしょうね。皆さんの中にも、アイロンは持っていないという方が多いかと思います。筆者も、「不燃ゴミ」に出してしまいました。青汁は飲んでませんが……。
家のリフォームが、大学の授業料より幅を利かせるというのは、少子高齢化のなせる業ですよね。こうしてみれば、消費者物価指数の基準改定という作業の中にも、人間の営みとしての経済活動の姿が滲み出るのです。
それはそれで、なかなか面白いですよね。ただ、今回の基準改定については、それが日銀の物価目標達成に対して、凶と出るか吉と出るかという点が、大いに注目どころです。
改定で指数入りとなったり、比重上昇となった項目の値上がり幅が大きければ、物価が全体として上がりやすくなるので、日銀にとって有利に働くことになります。逆なら、逆の結果となるわけです。この辺りがどうなりそうかで、2%上昇達成宣言のタイミングも、変更されるかもしれません。
ことほどさように、物価変動が話題になる時は、その中身が肝心です。どの品目のどんな動きが、全体に効いているのか。そこをしっかりチェックしましょう。
「悪魔は詳細の中に潜む」。英米の格言です。契約書は細かいところまでよく読め、という忠告です。これは、「真相は詳細の中にある」と読み替えてもいいでしょう。というわけで、物価の真相もまた、詳細の中にあるのです。