トランプさんのアメリカがTPPから抜けそうだというので、グローバル貿易を巡る主導権争いが慌ただしくなっています。アメリカ抜きの11カ国でTPPバージョン2をつくることにしたらどうか。いやいや、そうではなくて、残り11カ国一丸となって、トランプさんを説得しよう。TPPがどんなにお得か、得するのが大好きなトランプさんにアピールしよう……等々、あれこれ、議論がかまびすしく繰り広げられています。
そうこうしていると、そこに、RCEPくんがここぞとばかりに乗り出してきました。RCEPはRegional Comprehensive Economic Partnership の略称。日本語名は、東アジア地域包括的経済連携です。東アジア諸国の間で、広範な経済連携関係を取り結んでいこうという構想です。日本を含む16カ国が協定締結に向けて交渉を進めています。
RCEPには、中国が至ってご執心です。それもそのはずです。「環太平洋」を打ち出したTPPに対して「東アジア」をもって対抗しようとしているのです。TPPもRCEPも、その先に見すえているのが、FTAAPです。通商協定や経済連携協定関係の話になると、こんな具合に頭文字用語がやたら飛び出してきます。少々、めまいがしてきますね。
FTAAPはFree Trade Area of the Asia-Pacific。アジア太平洋自由貿易圏構想です。この広範な地域を囲い込む経済圏において、どのような約束事に従って貿易や投資を執り行うか。このことについて、誰が主導権を握るのか。日本なのか、中国なのか。ここが次第に焦点となりつつあります。
日米こぞってTPPに前傾姿勢だった間は、中国のRCEPプロモーションは比較的控えめでした。ところが、アメリカが抜けそうだと見るや、俄然、熱がこもってきています。
こうして、地域覇権を巡る国々の陣取り合戦が始まると、どうなるでしょうか。実は、この道を経て、世界はかつて第二次世界大戦へと突入していったのです。二度と再びこの道に踏み込まないために、WTO(World Trade Organisation:世界貿易機関)が存在する。そのはずです。WTO加盟国が、相手を特定し、地域を限定した貿易圏を形成することは、原則的にWTOのルール違反なのです。それなのに、WTOはこのルール違反を厳しく取り締まってきませんでした。だから、やっぱりこうなってしまうのです。
とんでもない形で歴史が繰り返し始める前に、何とかする必要があります。そして、話は実に簡単です。TPPもRCEPもFTAAPも止めてしまえばいいのです。みんな、一つのWTO家族の一員でなぜいけないのでしょうか。それが平和のための経済関係のあり方です。
WTOがんばれ! WTOもっとしっかり!