東京医科大学という学校が、何かと世間をお騒がせしていますね。
お騒がせその一が、文部科学省の佐野太科学技術・学術政策局長を巡る贈収賄問題です。「私立大学研究ブランディング事業」で東京医科大学に便宜を図ってもらう見返りに、佐野氏の息子を同大に合格させたということです。この問題で、東京地検特捜部が佐野氏を受託収賄容疑で逮捕しました。この段階で、彼は「佐野容疑者」になったわけです。東京医大の臼井正彦理事長も、この問題に関与していたとされています。
東京医大によるお騒がせその二も、やはり入学試験にまつわる問題です。女性受験者に限って、1次試験の点数を一律減点していました。そうすることで、女性入学者数の抑制を図ったというのです。
かたや、押し上げ及第。かたや、引き下げ落第。何ということでしょうね。いずれも、ひたすら唖然とするほかはない悪行状です。浅ましさの極みと言うほかはない「二つのお騒がせ」です。それを同じ一つの大学がやっている。いやはや。
もっとも、「局長ご子息押し上げ及第問題」はともかく、女性受験者の「引き下げ落第問題」に関しては、ひょっとすると、東京医大に限らず、大学入試だけにも限らない問題なのかもしれません。そう思えてしまうような話に、実際に折に触れて遭遇します。
企業の採用や国家公務員試験などにおいても、純粋に成績だけで合否を決めると、どうかすれば合格者の全員が女性になってしまう。これはまずいので、それなりの匙加減を加えることになる。そんな内情は、結構、世の中に広がっているようなのです。
多様性確保のためには、こんな匙加減を施すこともやむを得ない。そんな声が聞こえてきそうな気がします。ですが、それはどうでしょう。
もし、状況が逆だったらどうでしょうか。成績本位でいけば、合格者は全員男性になる。こういう実態だった場合、果たして、多様性確保のための匙加減が施されることになるのでしょうか。そんなことはありませんよね。そうなのであれば、見渡す限り男性ばかりの役員会議とか、異業種経営者交流会とか、国会議員団などというものは出現してこないはずです。
実際には、360度男性だらけ状態というものが、そこら中にいくらでもある訳です。この実態を放置して、女性が多数を占めそうになった時だけ、多様性確保のための匙加減を加える。こんな欺瞞がまかり通っている限り、本当の多様性が実現することは決してないでしょう。
自分たちの保身のために、異質なものを排除する。この発想がもたらすものは、滅びです。
ところで、もし佐野容疑者の子供さんが娘さんだったら、東京医大はどうしたのでしょうね。どう思われますか?