おねえさんの写真もパシャリと撮らせていただいた。50代くらいか。色っぽい。夜は更けてゆく。それから、あなた参政党知ってる? と聞いてきた。それはママさんだったか。ああ、最近なんかよく目にしますね、と返すと、よく知ってるわね、明日講演会に行くのよ、とテンション上げて話し始めた。ほらそこにも本あるでしょ、と。これは話が長くなりそうだと思った。適当に話を切り上げて、お会計お願いします、と伝え、店を後にした。ママと常連のおねえさん、店の外まで出てきてくれて、看板前でもパシャリ。優しい人たちだった。店から宿まで歩きながら、いい旅だったなと振り返った。いや、宿までの道がわからず、けっこう歩いたのだ。結局タクシーで戻った。
翌日二日酔いと凄まじい日差しの中、ボトボトとゆっくり歩きながら弘前の駅へ向かった。こういう時、背負っているギターが煩わしい。汗をかく。水を買う。汗をかく。ようやく駅へ辿り着き、時刻表を確認する。目的地は青森駅。本数は少ない。電車が来るまで、構内の休憩所で瓶のジュースを買い、おでこに当てて冷やす。ようやく電車がホームに入ってきたようで、改札抜けて乗り込む。
前日の雨で車窓の風景はうるおっていた。山は緑というよりも、青色だった。この季節特有の色なのだろうか。歌が生まれそうだったが、ノートに残っているのは、2行くらいの言葉。これがいつか歌になるのだろうか。
青森駅に着き、小腹が空いたので、ぷらぷらして見つけたカレー屋に入る。ここでも水をがぶがぶおかわりした。カレーは美味かった。それから駅へ引き返し、ロータリーでバスを待つ。その前に宿に行き、荷物を預けたのだった。ギターとトランクを預かってもらい、あとで部屋に入れてもらうように頼んだ。ロータリーで待っているとバスが来た。青森競輪場行きの無料シャトルバス。だいたいどこの競輪場でも、こういう無料シャトルバスがある。バスに乗り込み、車窓を眺める。バスはどんどん山を登り奥地へと進んでいく。けっこう走ってようやく着いたが、ここまで山奥にする理由は何だったのだろうか。
バスを降りると山の香りがした。夏の山の息吹。周りは、山、山、山だ。競輪場に入り、直近のレースを100円、200円買ってみる。新聞を買って適当に予想したが、これが万車券となった。
ばーんと開けた空、まばらな人、おっしゃああと叫ぶこともなく、静かに、よしっ、と呟き、精算。自分はギャンブラーではない。高額を賭けることもなければ、人生を狂わすような賭け方もしない。それでも現場に行きたくなるのは、人間が人間に賭ける、その完結している感じが好きだからかもしれない。いたってシンプル。選手は高額賞金を目指し、客は自分の金を投げ入れ自分を興奮させる。何人かの競輪選手の顔が浮かぶ。皆いい顔をしている。客も怒号を喚き散らす輩もいれば、小さい声で、〇〇君、後ろから来たよ、と普通に話しかける人もいる。金網越し、選手は近いのだ。聞こえるのだ。