海では釣りをする人がいた。自転車にまたがったまま眺めた。釣り人はこちらを怪訝そうな顔で見つめていた。好奇心のまま行動していてはいけない年齢なのかもしれない。平日の昼間に自転車で港を訪れる人はいないのだろう。少なくともここでは。自転車は見かけなかった。小さな灯台のようなものが見えたので、そこまでぐるっと回って行ってみることにした。
ぐるっと迂回すると川に出た。川が海になだれ込む、その時。川が海という名前になるその時。しばらく川と一緒に走った。
そしてようやく防波堤に辿り着いた。少し先に灯台のようなものがあるが、もうそこまで行く気力はなくなっていた。暑すぎるのだ。しかし風は、少し涼しく、あ、秋は近いのかもと思わせた。
しばらくそこに腰掛け、海を眺めた。魚が、小さな魚が何匹も泳いでいた。岸壁にもごもご顔をぶつけて、何か食べているのか。ああ、まったく自分の生活圏と関係ないところで、毎日、営みがあるなと思った。そこに小さな鳥が3羽飛んできた。ひゅーっときて、魚たちの近くにやってきた。これは狙ってるのかもしれない。ぴょんぴょんぴょんと1羽が右へ移動し、ぴゅーいぴゅい、と鳴く。残りの2羽もそこに移動する。会話が聞こえてくるようだ。鳥と、魚と、海と、自分しかいない。魚がやってきた。何匹かくるっと体を回転させて腹を見せた。キラキラキラと陽の光に反射した。美しい。鳥たちはそれを見ていた。はっきりと見ていた。どんな交流なのだろう。本当にそんなことがあるのだろうか。小さな小さな行いだったが「存在」の大きさは変わらないのだなと思った。いやそれどころか、海、魚、鳥、の三者間で、こちらの想像を超えた交流があって然るべきだろう。それを見させてもらえただけでもありがたかった。
帰りは海に流れ込む川を遡上して、自転車を走らせた。熱い日差しに新しい眼鏡が光る。