宿の周辺をぽろぽろ歩き、那覇の繁華街に出る。また歩き、店を覗き、のんびり飲めそうなところを探す。1軒、沖縄民謡の店がのんびりできそうだと思い、入る。ここがよかった。店のおばちゃんにカラオケで民謡を歌ってもらい、自分も勧められたので1曲歌った。こういう時は迷う。何がいいか。裕次郎でもかますか。「我が人生に悔いなし」を入れる。サラリと歌う。沖縄民謡の軽やかさ、踊りたくなるようなうねりとは程遠い、自分の抑揚のない歌。それなりに気持ちを込めて歌ったが、なんか響いてない。店のおばちゃんも、途中から戻ってきたママさんも、ぱち、ぱち、ぱち、という感じ。んんんダメだったかと思い、ママの方を向くと、何か言いたげだ。そして、悔いはなし、って、ぜんぜん思わないな~と、ボソッと言った。男の人って、なんかキザで、もう悔いはないとか言うけど、私はまだまだ死ねない。悔いが残る。100までやりたいことが山ほどある。欲望があるのよ、とつづけた。ウッときた。恥ずかしい、と思ったと同時に小さな喜びを感じた。そこからママさんの話をたくさん聞き、ビールは3本、これ以上は次の日に支障が出ると思い、店を出ることにした。最後に店のおばちゃんに、どこか沖縄でおすすめのところありますか、と聞いた。きんがいいんじゃない。夜とかアメリカ人とかたくさんいて面白いかもよ、と教えてくれた。きんは「金武」と書くらしい。ノートにメモして店を後にした。とりあえず那覇バスターミナルに行けばなんとかなるだろう、ということで次の日の朝、バスターミナルに行くことに決めた。
翌朝バスターミナルに着くと金武へは直接は行けない、ここで乗り換えて、と係の人に言われた。けっこう遠いみたいだ。接続の時間も悪かったので、読谷に行くことにした。読谷行きのバスは出ていた。係の人がスマホで調べてくれて、画面を見せてくれた。それを写メで撮らせてもらった。細かい地図は持っていなかった。まあなんとかなるだろう。コンビニで沖縄っぽいものを買ってバスの中で食べよう。路線バスで1時間ちょい。バスからどんな景色が見えるだろう。
バスに乗り込んで後方の席に座る。乗客は3人くらいだったか。これなら菓子パン食べても良いだろう。