ライブは盛況で、よくこんなに人を集めてくれたなと思った。若者たちがあたらしく、人が集う場所として、街を盛り上げようという気概を込めて作ったスペース。そういうところで歌うということの意味。その意味を噛み締めすぎると余計なお世話になるので、ありがたい、という気持ちと、あとは一曲一曲丁寧に歌うだけ。最後は外に出て、中庭で、歌った。星がたくさん出ていた。
翌朝荷物を宿に置いて、少し喜多方の街を歩いた。駅まで行く途中、ラーメン屋に行列が出来ていた。それも1軒だけではない。これには驚いた。駅近くの茶店に入り(素晴らしい店だった)、駅でマップをもらい、それから教えてもらった土産物屋で自転車を借りた。喜多方ラーメンの店はたくさんあった。どの店も混んでいたが、ちょっと遠くまで自転車を走らせると、すっと入れる店があった。そこで喜多方ラーメンを食べた。やさしい味だった。
帰りの時間が近づいていた。宿に荷物を取りに行き、駅まで戻った。陽が傾いてきて、急に懐かしさが込み上げてきた。ここにいてもいいんだぜ、そんな声が聞こえてくるようだった。もちろん気のせいだろうけど。
改札を抜けて逆のホームに渡るために階段を登る。途中はげましの言葉がつづられていて、元気になる。ホームに降り、電車を待っていると、反対のホームに観光列車か、ちょうど機関車が入ってくるところだった。煙を上げ、ボーッという汽笛を鳴らし、黒光りする車体。ああいう列車で母は東京へ出たのだろうか。そこまでは思わなかったが、夢中で写真を撮りたくなるほど、その車体は格好良かった。