そろそろ時間で、山を下りなければならない。美しいものは見られた。茂吉の歌碑は雪に埋まってたり、文字がうまく読めないものもあった。でも茂吉は山が好きなんだな、というのがなんとなくわかった。ゴンドラに乗り、山を下りる。歩いてまた山を下る。高湯通りまで戻ってくる。外湯に入るか。通りにある公衆温泉。先に男性客が1人いた。寒さで縮こまった体を湯船に入れる。じわっと芯からあたたまる。前日積もった雪が、屋根の隙間からきらきらきらと舞ってくる。雪は生きてんのかなあ。手をかざすと、雪の粉は手のひらでしゅわんと消えてなくなった。
しばらく歩いていると、小さな女の子が、これあげる、と言ってハートの形をした雪をくれた。冷たくてあったかい雪のかたまりだった。