上の方に行くのは難しそうなので、坂を下り、少し大きな道を歩いた。しばらく歩くとロープウェイ乗り場があった。全部で乗り場は3つあるようだった。自分以外は、スキー・スノボー客しかいなかったのではないか。スキー・スノボーにはもってこいの雪だ。楽しそうだ。ここに歌があるかわからないが、スキー・スノボー教室なるものがあった。やってみたい、直感で思った。歌を作るために歩くべきか、スキーをやって歌にすべきか。しばらく悩んだ。とにかく楽しそうだ。次の日に早朝からの教室もある。とりあえず、今日はやめておこう。それからも歩いて歩いて、メモを取ってメモを取って力尽きた。日が暮れるのも早い。宿舎に行って温泉でも浸かろう。
温泉に入り、少し息を整えた。温泉の力は凄かった。休憩所に書いてあった地球創世記の話に、グイっと引っ張られた。あの、温泉の岩場などについた緑色のコケ、藻のようなもの。その正体が書いてあったのだ。ビビビと来た。これはデカい歌が書ける。少し興奮して部屋に戻った。部屋で少しメモ帳を整理して、夜の街へ出た。しかしこれが誤算で、飲み屋はあったが、ことごとく断られた。2軒続けて。こんなことは初めてであった。何人? と1軒目では聞かれ、1人です、と言うと、あーごめんなさい、と言われた。2軒目では入った瞬間断られた。風貌がいけなかったのか。打ちひしがれて歩いていると、ラーメン屋があった。いいですか、と恐る恐る尋ねると、どうぞ〜と明るく迎え入れてくれた。神だ、と思った。雪の夜道をずっと歩いていたので、その明るさ、一杯のラーメンに、神だ、と思わずメモに走り書きしていた。温泉どうふをいただき、ビールも飲み、あったまって宿舎に戻ることができた。
翌朝、朝食は付いていたので、食堂へ。もう周りはみな食べ終わっていたのか、ポツンと自分の分だけ置いてあった。このさみしさは、清々しかった。雪国で食べる塩ジャケの塩味、卵焼きの甘味、は体に沁みた。前日にひきかえ2日目は快晴であった。前の日に降った雪がきらきら輝いていた。
昨日やめておいたロープウェイに早めに乗り、山の上の方を目指した。ゴンドラが到着すると、皆さーっと滑っていく。小さな子供達もいて、学校のスキー教室のようだ。自分だけがリュックを背負っていて、スキー・スノボーの装備をしていない。変な目で見られてるなと思いながらも、枝に積もる雪が綺麗で、それを憧れのように眺めていた。遠くの山も雪化粧で、これ全体で命なのかあ、と感慨に耽っていた。もちろんメモ帳に書いた。これが歌になるかわからないけど、詩になるかわからないけど、景色の方はすでに驚きを超えていた。