こうした制度改善によって、日本学生支援機構の奨学金における種類別利用者の割合は大きく変化しました。12年には、第一種(無利子)利用者40万2000人、第二種(有利子)利用者91万7000人であったのに対して、24年には第一種(無利子)利用者46万5000人、第二種(有利子)利用者62万3000人、給付型利用者35万1000人となっています。12年時点では無利子もしくは有利子の貸与型のみであったのが、17年に給付型が導入されて、その後は給付型の利用者が増加し、全体の中で大きな割合を占めるようになったこと、そして貸与型のほうも無利子が増加し、有利子が減少していることがわかります。
奨学金利用者数のデータを見る際に重要なのは、第二種(有利子)利用者の減少の多くは、給付型利用者の増加によって引き起こされたものではない、ということです。給付型奨学金を利用するためには、多子世帯を除いて、学生の出身世帯の所得について厳しい制限が課されています。給付型奨学金を利用することで有利子奨学金を利用しなくて済むようになった学生は、一部にとどまると予想されます。
それでは、これだけ第二種(有利子)の利用者が減ったのはなぜでしょうか? 10年代~20年代にかけて、学生の経済状況が大幅に改善したというデータはありません。第二種(有利子)利用者の減少は主として、卒業後の奨学金返済を心配する意識の広がりから引き起こされたものと見ることができます。
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奨学金問題対策全国会議は、奨学金の社会問題化に取り組みました。その際に、貸与型奨学金の返済困難を訴えることは重要なポイントでした。メディアも奨学金返済困難に陥った若者の状況をさまざまな形で伝えました。そのことにより、奨学金返済の大変さが多くの人々に認識されるようになりました。その結果、貸与型奨学金の中でも利用額が多く、かつ利子がつく第二種(有利子)奨学金を避ける傾向が強まったといえます。
有利子奨学金の利用を避ける傾向が強まる中、大学の授業料は上昇を続け、親・保護者からの学生への経済的支援は増えません。そうなれば、多くの学生は「アルバイトを増やす」という選択を取るしかありません。学生はこれまで以上に、アルバイトをするようになりました。たとえば、アルバイトで月7万円以上稼ぐ学生の割合は、自宅生が15年の11.9%から25年の19.9%、下宿生が15年の6.9%から25年の16.6%へと急増しています(全国大学生活協同組合連合会「学生生活実態調査」)。
私の周囲でも、「アルバイト漬け」生活に苦しむ学生が増えています。3年ほど前までは、必修科目など取得単位が多く、また大学生活にまだ慣れていないこともあって、大学1年生の春学期はアルバイトを一つに絞る学生が多かったのですが、最近は入学当初からアルバイトを「かけもち」する学生がとても増えています。26年4月、都内の大学2年生5人と話したところ、5人のうち4人の学生が3つのアルバイトをかけもちしていました。学生の話を聞くと、彼らの周囲では3つのアルバイトをしている学生が多数派を占めているとのことです。
25年度から、学生が親の税制上の扶養(特定親族特別控除)に入り続けられる条件額が年収103万円から150万円に引き上げられたことも、学生アルバイトの増加に拍車をかけています。学生から受ける相談も、「深夜までアルバイトをしているので授業中に寝てしまいますが、どうしたらよいですか?」「アルバイトの時間が長いために、授業の課題に取り組む時間がありません」など、「アルバイト漬け」生活で学業に支障をきたしている状況を訴える内容が増えています。
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10年代前半以降、利率上昇が進まなかった中でも、有利子奨学金の利用者数は減少を続けていました。近年の有利子奨学金の利率上昇は、有利子奨学金の利用を避ける傾向を、一層促進させることになります。有利子奨学金の利用が減れば、それは学生にアルバイト時間を増加させ、学業など大学生活に悪影響を与える危険性が高いでしょう。
有利子奨学金の返済負担急増は、若者の生活に大きな困難をもたらしています。物価高による生活困難と合わせて考えれば、奨学金の返済負担に苦しむ若者を救うために緊急措置を実施すべきです。奨学金の返済負担の急増を是正するために、利率の引き下げや据え置き、利子の減免、返済額の軽減や返済期限猶予などの措置が考えられると思います。
中長期的には、奨学金制度の根本的な改善が必要です。今回の利率上昇は、有利子奨学金の問題性をあらためて知らしめることとなりました。貸与型奨学金については「有利子から無利子へ」のさらなる移行、そして奨学金全体としては「貸与から給付へ」の移行を加速化することが強く望まれると思います。