児童相談所や捜査機関などにおいて、犯罪や虐待の被害を受けた可能性のある子どもから、「何があったのか」という事実に関する情報を、できるだけ正確に、精神的な負担をかけることなく聴取することを目指す面接法のこと。子どものみならず、障害のある人、性犯罪を含む重大な犯罪の被害を受けたとされる人などにも用いられる。
従来、被害の疑いのある子どもは、福祉や司法の機関、さらには法廷で、繰り返し聴取や尋問を受けることが多かった。このような過程では、①時間の経過とともに記憶が薄れていく、②誘導的な質問により記憶がゆがめられる、③面接が繰り返されることで精神的な外傷(トラウマ)を負う――などの問題が生じることもあった。こういった問題に対応するため、欧米では1990年頃から司法面接の手法が開発され、用いられるようになった。
2000年代に入り、日本でも司法面接に関する書物が出版されるようになった。2008年頃より研究者らによる司法面接の研修が行われるようになり、2015年には、こうした手法を取り入れた実践として、児童相談所、警察、検察が協同して面接を行うようになった(厚生労働省では「共同面接」、法務省や警察庁では「代表者聴取」と呼ぶ)。2021年からは、未成年者のみならず、知的障害者、精神的な障害をもつ人を対象とした代表者聴取も行われている。
司法面接は、できるだけ早い段階で、多機関が連携し、チームを組んで行われる。面接室とモニター室を準備し、面接室では面接者と被面接者が1対1で面接を行い、面接の過程を録音録画する。また、モニター室では、「バックスタッフ」と呼ばれるチームのメンバーが面接をリアルタイムで視聴し、支援する。
世界には様々な司法面接ガイドラインがあるが、共通する特徴は二つある。
第一は被面接者から自由で自発的な報告を得ること。従来の子どもからの聞き取りでは、具体的な文言を含む質問によって誘導や暗示が与えられてしまうことが多かった。これに対して司法面接では、「◯◯さんにたたかれたの?」といった具体的な文言を含む質問を避けることによって、自由で自発的な報告(「自由報告」という)を得ることを目指す。そのために、答えの幅に制約がない質問(「オープン質問」という)を行う。具体的には、以下のような形がある。
(1)誘いかけ質問:「何があったか(どんなことでも全部、最初から最後まで)話してください」と問いかける。
(2)時間分割質問:子どもが、Aがあった、Bがあった、と話していたならば、子どもの話していない部分を話してもらう。「AとBの間にあったことを話してください」など。
(3)手がかり質問:子どもがすでに話していることについて「さっき話したAのことをもっと詳しく話してください」と問いかける。
(4)それから質問:子どもが話し終えても「それから」「そのあとは」とさらなる報告を促す。この他、「うんうん」などの相づちも有効である。
司法面接ガイドラインに共通する第二の特徴は、「自由報告」が最大限に得られるよう、面接を構造化(段取り化)することである。
例えば、以下のような段取りに従って順に行われる。(1)挨拶や面接の説明。(2)ラポール形成(話しやすい関係性を築くこと。「(被面接者)さんは、何をするのが好きですか」など)。(3)グラウンドルール(面接でのお願い事。「知らないことは、知らないと言ってください」など)。(4)思い出して話す練習(「今日朝起きてからここに来るまでにあったことを最初から最後まで全部話してください」など)。(5)面接の本題に入る(「今日は何を話しに来ましたか」)。可能な限り自由報告を求める。(6)必要があれば補足質問を行う。(7)「クロージング」を行う(被面接者に感謝し、希望や質問を受け、中立的な会話に戻して終了すること)。
このような方法で面接を行うことで、従来型の面接を行った場合よりも、より多くの、より正確な情報が引き出されることが確認されている。