性自認や性的指向などを理由とする迫害によって国外に逃れた性的マイノリティーの難民のこと。レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)に、性別に当てはまらない身体を先天的に持つ人を指すインターセックス(I)を加えてLGBTI難民と言うこともある。
世界では現在、アフリカや中東、カリブ海諸国を中心に約70カ国で同性愛が犯罪とされており、刑罰として死刑が定められている国も6つある。また、性的マイノリティーであることを理由に暴力を振るわれたり、迫害を受けたりしているにもかかわらず、そうした迫害に対して政府が保護しようとしない国もある。
1951年に締結された難民条約には、性的マイノリティーへの迫害について言及する条文は存在しないが、1990年代半ば以降、欧米を中心に、LGBT難民が同条約で庇護の対象となる要件の一つである「特定の社会的集団」の一員に当たると認める動きが広がり、2000年代にはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)でも、LGBT難民を認めるガイドラインなどが定められた。
日本では、2000年に同性愛者であることで迫害を受ける恐れがあるとしてイラン出身の人が難民申請を行ったが、不認定となった。しかし2018年には、同性愛に対する迫害の恐れから逃れてきた人が難民として初めて認定された(関係者保護のため、国名や性別などは明らかにされていない)。2023年には、ウガンダから逃れてきた女性が難民認定を求めた裁判で、大阪地裁が国に難民と認めることを求める判決を出し、国が控訴しなかったことで判決が確定した。2024年にも北アフリカ地域から逃れてきた男性の裁判で、同地裁が国の不認定処分を取り消している。
2023年、出入国在留管理庁(入管)が難民認定の基準を定めたガイドラインを策定し、そのなかで、LGBTやジェンダーに関わる迫害も難民に該当し得るとした。ただし、日本ではそもそも難民認定率が極端に低く、このガイドラインについても、難民支援団体などからは「難民と認定されるべき人の範囲を極端に狭める基準となっている」という批判がある。