公益通報者保護法とそれに基づく指針(内閣府告示)に基づき、勤め先の企業や官庁などの不正を通報した人(いわゆる内部告発者)を解雇や懲戒処分などの報復から保護する制度のこと。公益通報者保護法は2006年に施行され、公務員や民間企業の労働者が通報したことによる解雇や契約解除を無効とするとともに、降格や減給など、通報者に不利益となる取り扱いを禁止した。2022年には、通報者の保護を強化する改正法が施行された。
この改正により、従業員数が301人以上の企業や組織では、内部公益通報への対応を担当する「公益通報対応業務従事者」(従事者)を定めることが義務づけられた(300人以下の企業は努力義務)。従事者は、組織の長や幹部からの独立性が確保されなくてはならない。従事者以外は通報者の特定に関わる情報を扱ってはならず、従事者は守秘義務を負う。守秘義務は異動や退職後も続き、これに違反した場合、刑事罰として30万円以下の罰金を科せられる。
2025年6月に成立・公布された改正法では、実効性を高めるため新たな罰則を盛り込んだのが特徴。公益通報者を解雇や懲戒処分にした企業や組織に対して3000万円以下の罰金、処分の決定を下した者にも6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される。また、通報後1年以内に行われた解雇や懲戒処分については、雇い主側が立証責任を果たせなければ、公益通報を理由に実施されたと推定するという規定が設けられた。このほか、正当な理由なく通報者を特定する行為の禁止も盛り込まれた。改正法は公布から1年6カ月以内に施行される。