イギリスの製薬会社、ラインファーマ社が製造・販売する、人工妊娠中絶(以下、中絶)のための服用薬。日本では2021年12月に同社が製造・販売を申請し、2023年4月28日、厚生労働省により承認された。「メフィーゴパック」は販売名、「メフィーゴ」は同社の登録商標。
メフィーゴパックは、妊娠を継続させるために必要な黄体ホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」と、子宮を収縮させる働きがある「ミソプロストール」という、2種類の薬剤で構成されている。
日本では母体保護法で定められた指定医師の処方により、妊娠63日(妊娠9週0日)以下の妊婦が服用することができる。服用にあたり、当面は入院か、外来での院内待機が必須とされている。服用は医師の面前で行う。まずミフェプリストン1錠を服用し、36~48時間後にミソプロストール4錠を口内で30分かけて溶かしてから飲み込むと、ミソプロストール服用後24時間以内に胎盤や胎嚢(たいのう)などの子宮内容物が腟を通って排出される。
日本国内でのメフィーゴパックの臨床試験(治験)には、中絶を希望する妊娠9週以下の妊婦120人が参加。このうち112人(93.3%)は、服用後24時間以内に服薬のみで中絶が完了した。残る8人(6.7%)の被験者は、子宮内容物の一部が胎内に残り外科的処置が必要となったり、24時間以内に子宮内容物が排出されなかったりした。また、被験者のうち約60%に、軽症もしくは中等度の下腹部痛や嘔吐といった症状が表れた。
経口中絶薬はWHO(世界保健機関)の「必須医薬品」(健康を保つために必要不可欠であり、誰もが入手できる価格で提供されるべき医薬品)に指定されており、海外では比較的安価に提供されている。しかし、日本における中絶は基本的に保険診療ではなく自由診療であるため、メフィーゴパックの価格も医療機関が個別に設定する。日本産婦人科医会は、薬剤価格と、診察や検査等にかかる「管理料」をあわせて、メフィーゴパックによる中絶費用は10万円程度になることが予想されるとしている。これに対し、医師や助産師ら有志による「性と健康を考える女性専門家の会」は、メフィーゴパックの承認前の2023年2月、厚生労働省に要望書を提出し、安価で使いやすい薬となるように医療機関を指導・監視することや、保険診療を適用することなどを求めている。
なお、流通を厳格に管理することが承認条件とされているため、医療機関はメフィーゴパックを取り扱うにあたり、ラインファーマ社が求める事前の登録と研修の受講を済ませなければならない。処方を希望する人は、それらの手続きが完了した医療機関を同社HPから検索することができる。