「ダガー賞」は、英国推理作家協会(The Crime Writers’ Association : CWA)が主催する世界的に権威ある文学賞。同協会は、受賞者に賞金のほか短剣(ダガー Dagger)を象(かたど)ったトロフィーを授与する。
ダガーという言葉を賞の名称に採用した理由には、古典的な犯罪小説でよく用いられる凶器であることや、英国で1940年代に生まれ現在まで人気を博す推理ボードゲーム『クルード(Cluedo)』にも登場することが関係すると言われている。
現在計13の部門があるダガー賞のなかで、もっとも著名な「ゴールド・ダガー賞」は、1年間にイギリスで刊行された英語作品の最優秀長編小説に授与される。
1955年に創設されたゴールド・ダガー賞は、主催協会発行の月刊会報誌である「レッド・ヘリングス」の名を冠した「クロスト・レッド・ヘリングス賞」として始まり、1960年代に同賞に名称を変更した。対象となるジャンルは、犯罪小説、サイコサスペンス、ミステリー、スパイ小説、スリラー小説、警察小説など幅広い。
ダガー賞には他にも、1953年に同協会を設立したジョン・クリーシーの名を冠し、新人作家のデビュー作に贈られる「ジョン・クリーシー・ダガー賞」や、2002年にスパイ小説「ジェームズ・ボンド」シリーズの著者であるイアン・フレミングの名を冠して創設された「イアン・フレミング・スチール・ダガー賞」などがある。さらに、当該ジャンルにもっとも貢献した出版社に贈られる「ダガー賞出版社部門」、図書館やその利用者によって選出される「ダガー賞図書館部門」といった部門があり、同賞の発展を支えている。
ダガー賞は、主に英語で書かれ、英国で出版された作品や作家を対象に顕彰するものだが、2006年からは「インターナショナル・ダガー賞」が創設され、それまでゴールド・ダガー賞の対象であった、英語に翻訳された非英語圏の作品を正式に評価・顕彰する部門が独立した。2016年に日本からは初めて、横山秀夫の警察小説『64(ロクヨン)』が、2019年には東野圭吾の『新参者』が同賞の最終候補作に選出された。2020年に「ダガー賞翻訳部門」に名称が変更された後、伊坂幸太郎の『マリアビートル』が2022年の最終候補作に挙がった。2025年には、王谷晶の『ババヤガの夜』が日本発の作品として初めて「ダガー賞翻訳部門」を受賞。同賞では、柚木麻子『BUTTER』も最終候補作に選出されるなど、日本の作品が存在感を増している。
ダガー賞
The CWA Daggers
イミダス編
2025/09/10