3人とも、自分たちは学校で必要な性教育を受けてこなかったと振り返るが、そうした状況で、本当に性の知識が必要になったときにまず頼るのは、やはりネット検索だという。
伊東さん「僕たちの世代は『Yahoo! 知恵袋』 をよく利用しますが、間違ったことを書いている答えでも『ベストアンサー』になっていたら、それが正しいと思ってしまいます。僕が見た中では、『同じ日に2回セックスするとき、2回めはコンドームなしでも性器を洗えば避妊は完璧だ』というような、明らかに間違っている『ベストアンサー』がありました」
中島さん「私も『Yahoo! 知恵袋』に性の悩みを書き込んだことがありますが、結局答えはわからず、誹謗中傷されただけだったという経験があります。もちろん、学校の性教育を充実させることは大切だと思います。でも、ユネスコの国際セクシュアリティ教育ガイダンスで示されているような、人権などまで網羅した包括的な性教育を日本の学校で行えるようになるまでにはまだ時間がかかるでしょう。
それに、どんなに性教育が充実したとしても、学校で教えられることって、『自分には関係ない』とあまり聞いていない生徒が必ずいるんですよね。そもそも学校に行けない、行っていない人たちもいます。だからこそ、インターネットで誰もが適切な知識を得られるようにすることが必要だと思います」
性の情報を「需要が多い」順で上位に上げていいのか
前田さんは16歳のときに性暴力の被害に遭った。身近な人にも相談できず、インターネットで支援情報を探したが、適切な情報にたどりつけずケアを受けられなかったことで、一時、自殺未遂をするまでに追い詰められたという。
前田さん「自分が性暴力の被害者であることを公表してこのプロジェクトを立ち上げたことで、『私も支援につながるまですごく時間がかかった。もしもっと早く適切な情報にアクセスできれば、今こんなにPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいないかもしれない』という声をたくさんいただきました。
被害者がどういうワードで検索をかけるかというのは一概には言えませんが、たとえば、『痴漢』で検索すると、一番上に出てくるのは加害者のための弁護士の広告だったりします。痴漢冤罪という問題があることは認識していますが、被害者が支援を求めてネットの情報を探すときに、加害者のための情報がトップに出てくるというのでは、セカンドレイプにもつながりかねません。
また、ネット検索でいち早く支援に繋がる事は、PTSD、妊娠、性感染症など性被害後のあらゆるリスクを防ぐためにも大切です。命や人権を守るために必要な情報が埋もれてしまうことがないようにしてほしいと考えています」
前田さん「結局、今のネットの仕組みでは、需要が多い方が上位に上がってくるので、アダルトコンテンツにアクセスしやすいという状況は、それだけ見る人が多いし、利益を生んでいるということだと思います。けれども、性に関する情報は、売れるものが良いという経済や多数決の論理だけで括ってはいけないと、わたしたちは考えています。
ペアレンタルコントロール
未成年に悪影響を及ぼす恐れがある性的・暴力的表現などを含むコンテンツにアクセスできないよう、子どもの情報通信機器の利用を保護者が監視・制限する取り組み。
セーフサーチ
検索エンジンでポルノや暴力などの不適切なコンテンツを非表示にする自動フィルタリング機能のこと。