学校で適切な性教育がほとんど行われていない中、子どもたちにとっては、身近なネットの世界が性を知るきっかけとなりがちだ。だが、それによって生まれる問題が多々あることは、前編で「アクロストン」のおふたりが指摘する通りである。
この問題について、今年4月、デジタルネイティブとして、子どものときからアダルトコンテンツ(成人向けの主に性的なメディアコンテンツを指す)にさらされてきた世代が声を上げ、「安心して性知識が得られるサイトを検索上位に出してほしい」というオンライン署名活動を始めた。
【「ネットのアダルトコンテンツについて考えよう(前編)~「アダルトコンテンツ=性の教科書」論の何が問題なのか」はこちら!】
デジタルネイティブ世代の問題意識
大学生の前田かや子さん、伊東勇気さん、中島梨乃さんが立ち上げた「SEOセックスプロジェクト」の元には、7月21日現在、約2万9300人の署名が集まった。SEOは「検索エンジン最適化(Search Engine Optimization)」の略で、ネットの検索結果の表示順位を調整することを指す。ちなみに、スウェーデンで「SEX」と検索すると、ユースクリニック(若者が自分の体や心の悩み、性のことについて無料で相談できる施設)や国営薬局のヘルスケアサイトが上位に表示される。一方、日本ではアダルトコンテンツが検索上位に並ぶのが現状だ。
中島さん「自分が小学校2年生ぐらいのときに初めて『セックス』で検索し、出あった情報はアダルト動画サイトでした。そこから自分の性に対する印象が歪んできたという感覚があって、そのことについての問題意識はずっと持っていたんです。スウェーデンでの事例のほか、フランスで「lesbienne(レズビアン)」という言葉でグーグル検索するとポルノサイトばかりが上位に表示されていたのが、ネットでの抗議運動などを受け、グーグルが「lesbienne」という用語の検索結果を変更するためのアルゴリズムを開発したと知り、日本でも同様の取り組みが必要だと、行動に移すことにしました」
やはり小学生のときからネットを使っていたという伊東さんも、友人たちとゲーム機でアダルトコンテンツに触れる機会が早くからあったと言う。
伊東さん「当時はまだフィルタリングもあまり普及していなかったということもあって、性について知りたいときに最初に触れるのがアダルトコンテンツという状況でした。もちろん、間違った情報や偏った女性像を植え付けられてしまうということも問題なのですが、アダルトコンテンツばかりが検索上位にくることで、純粋に自分が性に関することで困ったときに、検索しても知りたい情報が出てこないということも多かったんです。
だから、有害なものに触れないようにフィルターをかければいいということだけでもなくて、必要とするときに信頼できる性の情報にアクセスできるようにしてほしいということも、『SEOセックスプロジェクト』の目的です」
ペアレンタルコントロール
未成年に悪影響を及ぼす恐れがある性的・暴力的表現などを含むコンテンツにアクセスできないよう、子どもの情報通信機器の利用を保護者が監視・制限する取り組み。
セーフサーチ
検索エンジンでポルノや暴力などの不適切なコンテンツを非表示にする自動フィルタリング機能のこと。