なお、低用量ピルを飲んでいる場合は、服薬中に不正出血がないか、休薬期間に起こる消退(しょうたい)出血(※2)のときの出血量が多かったり痛みがあったりするか、出血が起こる前に月経前症候群のような症状が無いかなどをチェックしてください。
痛みも病気を見つける大事なサインです。月経困難症、子宮内膜症や卵巣の腫れなどは、腰や下腹部に痛みを感じることがあります。卵巣出血の場合は、下腹部に加えておへそのあたりが痛くなることもあります。子宮や卵巣がある場所は、股のところのコリコリした恥骨(ちこつ)という骨のすぐ上のあたりです。
月経のときに、ここに痛みを感じたら、婦人科で相談してみましょう。もし、毎回の月経中やその前後に腰が痛むということでしたら、子宮や卵巣がなんらかのトラブルを抱えている可能性があります。逆に、月経と関係なくずっと腰が痛むということでしたら、婦人科よりまず整形外科を受診するとよいと思います。
婦人科受診の前にネットで情報収集をしておきたいという場合は、日本産科婦人科学会の一般向け情報(https://www.jsog.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=1)、厚生労働省の「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」(https://w-health.jp)がわかりやすく、お勧めです。
怖がらずにがん検診を受けてほしい
たとえ何も症状がなくても、20歳以上の女性を対象とした2年に1回の子宮頸がん検診はお勧めです。ぜひ婦人科受診のきっかけにしてほしいと思います。
がんというと怖い病気のイメージが強いですが、どのがんも早期に発見できれば生存率は高まりますし、早期の子宮頸がん、子宮体がんでは8~9割の患者さんが快復して元気に過ごしていらっしゃいます。特に子宮頸がんについては、検診を受けていれば早期に発見できる可能性は高まります。
子宮体がんと卵巣がんには定期検診はありません。子宮体がんの検査は強い痛みを伴うこともありますので、必要な方だけに検査しています。子宮体がんは基本的に閉経後に増えてくるがんですので、閉経後に出血したという場合に検査をお勧めしています。。
一方、卵巣がんについては現在、有効な検診はありません。家族に卵巣がんになった人がいるとリスクが少し上がる可能性があると言われているので、該当する場合は年齢にかかわらず、婦人科に相談しながら定期的にチェックを受けるのがよいと思います。また、お腹が張ってきたり、食事量を変えていないのにお腹がぽこんと出てきたりした場合は卵巣が腫れている可能性があります。一度、産婦人科の診察を受けてみることをお勧めします。
なお、乳がんは女性に多い病気ではありますが、産婦人科ではなく乳腺外科(ブレストクリニック)が専門となります。乳房に違和感を覚えたり、乳がん検診で異常が見つかったりしたときは、乳腺外科がある病院を受診しましょう。
内診をするかどうかから相談を
婦人科を受診したくないという理由に、内診への抵抗感があると思います。内診では子宮の入り口や帯下を見るためにクスコという診察の器具を使ったり、子宮や卵巣の状態をチェックするために、腟超音波(エコー)検査の器具を入れて画像診断をしたりします。私たち産婦人科の医師にとって、患者さんの生殖器を見たり触ったりすることは仕事ですから、恥ずかしいと思う必要はありません。歯医者さんに歯を見せるような気持ちで、ご自分のからだのメンテナンスだと思って受けていただけたら嬉しいです。
思春期や高齢の方など内診が難しい方は、問診票にその旨を書き添えておくとよいと思います。「今日は内診はやめておきたい」「まずは問診での相談と、内診以外でできる検査を希望します」などと書いておけば、医師と相談しやすいでしょう。性交歴がない方は内診で強い痛みを感じたり出血したりすることもありますから、お腹の上からエコーで診察するという方法もとれます。
ただ、内診をしないと卵巣の状態を細かく診ることは難しいので、ケースバイケースで患者さんと相談しながら決めていくことになります。月経中や性器出血があってもエコー検査はできますが、子宮頸がん検診は血が混じると正確な判定ができないため、月経中でないタイミングでいらしていただくのが理想的です。
(※1)
不妊症の定義は「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(約1年間)妊娠しない状態」とされています。「一定期間」については男女の年齢や状態によっても変化すると言われています。
(※2)
消退出血とは女性ホルモンが低下することによって、子宮内膜が剥がれて起こる出血のことで、通常の月経や低用量ピルの休薬期間の出血を言います。