生きていること自体がリスクだと言えますが、それでも人間は子供を産み、育てて、これまで命をつないできたということを思い出してほしいと思います」
コロナ後の社会に活かせること
コロナ禍で露呈した日本のSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)の問題点について、早乙女医師は「WHOや国連女性機関(UN Women)などが早々にSRHRの重要性を訴えたのに対し、日本社会でそういう声はほとんど上がらなかった」と指摘する。
「国は『少子化だから女性1人あたり3人ぐらい産んでほしい』などと言いますが、その割には、まるで女性への罰ゲームのように産みにくい仕組みがたくさん放置され、女性の自尊感情が損ねられています。一方、『産まない選択』についてもあまりにも世界のスタンダードから遅れているのが日本の現状です。これはやはり、当事者である女性の声が反映されていないということだと思います。本当にくだらないルールが多すぎるんです」
「コロナ禍はこれまで当たり前とされてきた不合理で無駄な仕組みを変えていく必要があると気づかせてくれた」と早乙女医師は言う。
「様々な制限がある中でも自分は何を大切に生きていくか、ということを考えるとき、SRHRもそのひとつだということをもっと知ってほしいと思っています。SRHRは女性だけでなくすべての人にとって大切なものです。誰もが自分の性と生殖に関して、健康で楽しく、自分が望むように生きられるという社会になっていくには、まだ時間がかかるかもしれませんが、コロナ禍で得た気づきをコロナ後の社会に向けて生かしていくことで、そのための一歩が踏み出していきたいですね」