けれど出院後の保護観察中なので「◯日以上の無断外泊はしない」とか「夜◯時までには家に帰る」といった順守事項が課せられ、それらを守らなかったり、保護観察所が指定した居住地にいなかったりすると少年院に戻される可能性があり、「どうしたらよいか?」とColaboに相談してきた。
そこで私たちは彼女を保護し、児童相談所と保護観察所の担当者を集めて話し合うことにした。両者はそこで名刺交換を行った後、児相の担当者が「私たちとしては、一時保護の時点で彼女はもう家に返せないと判断していたんです」と切り出した。その後、彼女が安心して暮らせる場所をどう探すかで、児童相談所と保護観察所が互いに押し付け合おうとするようなことが起きた。児童相談所は厚生労働省、保護観察所は法務省と管轄が違うために連携が難しいのだそうだが、彼女のようなケースは本当に多いので、帰住先探しや出院後の支援などでの連携を強く求めたい。
警察と情報共有をすべきケースについては、各児童相談所の判断に任せるのではなく、過去の事件や今の状況を検証・調査し、よく議論して基準を作ってほしい。また、警察は福祉機関ではないが、現状で児童相談所の閉所時間に頼れる唯一の公的機関なのだから、虐待被害児に対し「取り締まり」ではなく「ケア=保護」の視点を持って関われるよう、全ての警官に継続的な研修を早急に行うべきだ。私は、そういう問題意識もなく「情報の全件共有」を語る人が増えることが怖い。警察には、むしろ補導した子を支援につなぐなど、必要なケアを受けられるよう積極的に動いてほしいと思う。
児童相談所と警察の情報共有を叫ぶ人たちには、「全ての子どもに弁護士を付ける」ことへの賛同も同時に求めていきたい。虐待されている子どもの中には「親と離れて生活したい」「親と縁を切りたい」と思っている子も、そうでない子もいる。しかし公的機関の対応には、そうした子どもの気持ちや意思が尊重されているとは感じられなかったり、子どもの権利が守られていないと思われたりすることが多々ある。
大きな権力に自分の人生や生活が左右されてしまうこと、決め付けられてしまうことを子どもたちは恐れている。虐待の事実が発覚したことからそういう経験をしたり、家族とのいい距離感を求めていたのに、介入があだになって関係が悪化したと感じたりした子どもは相談をしなくなる。だから警察と情報共有をするかしないかに関わらず、「子どもの味方」になる人を子どもたち一人ひとりに付けてほしい。「児童相談所の弁護士」ではなくて、「子どもの代理人」として活動できる専門家が必要だろう。
少年鑑別所
家庭裁判所の求めにより犯罪を犯した少年(満20歳未満の子)を収容し、少年審判で処分を決めるための鑑別や観護処遇を行う施設。少年鑑別所法に基づき地域社会における非行および犯罪の防止ににあたる。都道府県庁所在地などに設置され、全国に50カ所ある。
少年院
家庭裁判所から保護処分として送致された少年(満20歳未満の子)に対し、健全な育成を図ることを目的として矯正教育や社会復帰支援等を行う施設。年齢や心身の状況によって3種類に分けて設置され、第3種を除いて男女別となっている。全国に50カ所以上ある。