布施祐仁に聞く
元山仁士郎(聞き手) 『主権なき平和国家』の中で、日本のみならず、米軍が韓国やイタリア、ドイツで、レイプや殺人、強盗などの凶悪犯罪を起こすケースが紹介されていました。軍隊とは、一体どういうものなのでしょうか。
布施祐仁 軍隊というのは、唯一合法的に殺人ということが認めれられている国家の組織です。それはもちろん、いわゆる一般的な殺人とは違います。国防のためにそういったこと(合法的殺人)が役割として与えられています。
軍隊というのは、戦闘において敵を殲滅すること、無力化することが目標です。その中で、敵を殺すということが、自分の仕事になるわけです。日々、そういうことのための訓練を米軍はやっているわけですね。
だからこそ、軍隊に対してはきちんとコントロールしなければ、非常に危ないわけです。(コントロールするのは)本来であれば日本の政府や警察の役割なのですが、しかし日米地位協定では、米軍に対して日本の警察権を十分に行使することができない。あるいは、日本の刑事裁判制度から免責している。そのため、米兵が基地の外で罪を犯しても、日本側で十分に裁くことができない。
地位協定上は、(本来は)公務外の事件については日本側で裁くことができるのです。ところが、日米間で「重大な事件以外は日本が自ら裁判権を放棄して、アメリカ側に譲りますよ」という密約を結んでいるのです。その結果として、罪を犯しても十分に裁かれない。
本来ならば、一般市民よりも厳しくコントロールしなければいけない軍隊というものに対して、一般市民よりも非常に甘い形で特権を与えている。こういうことによって、特に沖縄では、米兵による犯罪というのが非常に多発しているのです。
伊勢崎賢治に聞く
元山仁士郎(聞き手) 軍隊っていうのは、そもそも何なのか。どういう組織なのか。自分の印象としては、沖縄の場合だと、(米軍の)事件事故が多い。良き隣人と言う言葉が良く使われますけど、全くそんなことはない。やはり、危険で恐ろしい存在というイメージがあります。
伊勢崎賢治 「イメージ」では語れないですね。なぜかというと、軍隊を使わなければ人がたくさん死んでしまうので、否応なく軍隊を使わなければいけない、というPKOの世界に僕はずっといましたから。そういうところでは、軍隊・多国籍軍しか頼りになるものがないわけです。軍隊がいなければ、住民が殺されてしまう。
それでは、軍隊とは何か。国家と言うのは、法と秩序を持つ小宇宙なわけです。そこで、ある小宇宙が、他の小宇宙に接触する場合がある。やはり領土問題が一番大きいです。テリトリーの概念が矛盾した場合は、小宇宙と小宇宙が衝突し、戦争になる。そこで、その小宇宙を守るためにあるのが、軍事力です。
国連ができてから、いわゆる戦争は違法化されています。つまり、他の小宇宙に自分たちの小宇宙では取れない資源があるという場合、昔は、それを取るために、ある戦線布告の手続きを取れば、戦争を仕掛けられた。つまり、戦争を自発的に仕掛けられるという権利が認められたときもあったわけです。
しかし、そういうのも、第一次世界大戦以降、違法化されています。自分からは仕掛けられないけど、敵が現れることはある。それに対処するのが、今は「軍事力」と言われています。自分は悪くないけれども、交戦せざるを得ない。その(自衛戦の)中での違反行為を定めているのが国際人道法です。そして、それ(国際人道法)によって縛られるのが、軍隊です。