読みながら思いました。私は気づかないままに猫のように生きていました。猫好きたちは皆、同じではないでしょうか。猫好きに心療内科医は必要がないのかも!?
裏目に出た2匹作戦
海原 加藤さんの本は、以前から読ませていただいています。特に『雨の日のネコはとことん眠い』(PHP研究所、1990年刊)は大好きでした。だから、今日は楽しみにしていたんですよ。加藤 ありがとうございます。光栄です。それでは、まず海原さんちの猫の紹介からお願いします。
海原 このコは「フー」ちゃん。10歳です。もう1匹、15歳の「ミー」ちゃんがいるんですが、とても人見知りで。
加藤 2匹の相性はどうですか?
海原 ダメです。私が出張がちなので、もう1匹いたほうが仲良く留守番できるんじゃないかと思ったんですが、ぜんぜん合わなくて(笑)。どっちもメスなんですが、性格がちがうんです。ミーはどちらかというと、ひとりでじっと空を見ているのが好きなタイプ。フーは遊ぶのが大好きで、初めの頃は遊ぼうってミーの側に近づいては怒られてた。いつもフーッて言われてたからフーちゃんって名前になったんですよ。
加藤 2匹作戦が裏目に出ましたか(笑)。ミーちゃんの人見知りは、元からですか?
海原 フーが来てから特に、かな。その前はじゃれたり遊んだりしていたんですよ。ミーは頭が良くて、人の気持ちが繊細にわかるんです。私が仕事で大変なときなどは察して、なんとなく側にいてくれる。フーはぼーっとしてて、まったくそういうのはないですね。
加藤 ミーちゃんはいつもどこにいるんですか?
海原 隣の部屋です。ふたりが顔を合わせると、追いかけ合って部屋中すごいことになっちゃうんで、動線を完全に分けて出会わないようにしています。お互い一歩も譲らずに攻めていく感じですから。
加藤 ミーちゃんはずっとひとりで過ごしているんですか?
海原 ひとりが好きなんですよ。でも、夜に私と一緒に寝るのはミーで、フーはこの辺で寝てます。
加藤 フーちゃん、お腹のところがたぷんとたるんでいるのが、アメショー(アメリカン・ショートヘアー)っぽくて、かわいいですね。でもこのコ、足が太いですね。あ、レディに向かってごめんね(笑)。
海原 確かに足が太くて短いんです。態度もデカイ。女のコっぽくないんです(笑)。
かなわぬ猫の恋の顛末
海原 ミーの前には「ダダ」というアメショーがいました。ダダはとても性格が良かったので、アメショーはみんなこうかと思ったら、ミーはちょっと気むずかし屋さんでした。加藤 オスは飼ったことないんですか?
海原 ダダはオスでした。性格は良かったけど、壁にオシッコをひっかけるマーキングがひどかった。去勢手術をしたけど時期が遅かったみたいで、オトナになっても治りませんでした。部屋中がオシッコだらけになって、引っ越すときに賠償金がものすごくかかったので、それ以降はメスです。
加藤 マーキングの原因、何かあったんじゃないんですかね。
海原 ちょっと思い当たるのは、ベランダ伝いに隣の家の猫がのぞきに来てたんです。
加藤 その猫もオスだったんじゃないですか?
海原 オスでした。
加藤 原因はそれですよ! 隣のオスが来るから、何とか自分のなわばりを守らなくちゃって思ってマーキングしてたんですよ。
海原 そうだったんですかね。お隣の猫はダダがメスだと思っていたみたいで、夜這いに来てたんです。で、その猫が亡くなったときにお隣さんからキャットフードをたくさんいただいたので、お悔やみを言いに行ったら、飼い主さんに「お宅の猫ちゃんのことが大好きで、初めての恋でした」って言われたんです。腎臓が悪かったんだけど、無理をして毎晩、会いに行っていたんだと。だから、うちもオスだって言えなくなっちゃって(笑)。
加藤 アハハハハハ。もしその人がこの記事を読んだら、「ええーっ! あの猫、オスだったの!!」ってショックを受けるでしょうね(笑)。
海原 いやいや、もうずいぶん前のお話ですから(笑)。
几帳面な群れ生活者には猫マインドが必要
加藤 海原さんが書かれた『こんなふうに生きればいいにゃん』(海竜社、2016年刊)を読ませていただきました。改めて思ったのは、こういう自己啓発本って猫だから成立するんですよね。「犬に学ぼう」っていうのはあんまりないような……。海原 犬って号令で人の言うことをきくけれど、猫ってそうじゃないところがいいんですよね。私が猫といてほっとするのは、猫が我慢していないからです。犬だと、もしかすると私が主人だから我慢して言うこときいているんじゃないかって、こっちが気を遣って疲れてしまうところがある。でも、猫はストレートで正直だから、安心できるんです。よく「お前は会社の犬だ」とか「○○は■■のポチだ」みたいな言い方をすることがあるけれど、「○○は■■のタマだ」とは言わないでしょ。タマだとなんだか上下の関係性がおかしくなっちゃう(笑)。
加藤 アハハハハ、確かに。でも、猫は単独生活者だから、猫としてこういう生き方が当たり前で、私たちがいろいろと気を遣うのは群れ生活者だからですよね。私たちが猫を見習って単独生活者のように暮らしていいのかなって気がしないでもないですが。
海原 人も単独生活者になりましょうということではなく、猫のマインドを多少取り入れつつ群れ生活をすれば、もっとのびのび自分らしく生きられるんじゃないかということです。
加藤 なるほど。