◆一筆御礼 ~対談を終えて
谷村さんの「出会った猫に、どこでどうしてきたのか聞いてみたい」という言葉はとても印象的でした。自分と出会うまで、どんな暮らしをし、どんなものを見てどんなことを考えていたのかを知りたい。そして、なぜ「今」があるのかに思いを馳せたいということでしょうか。おそらく小説家ならではの感性なのだと思います。映画化された谷村さんの小説『海猫』には、人の生い立ちゆえの“しがらみ”と、その“しがらみ”ゆえの愛の形が描かれていますが、人の「今」をその人の歴史の投影として捉えることで多様な登場人物の感情の機微を描ききることができるのでしょう。同じように、自分が出会った猫たちについても「今」の後ろにあるものを知りたいと思い、それゆえの“人格”として理解したいということなのだと思います。猫は、なぜか飼う人の見方どおりの存在になるものです。確かに、谷村さんに、そういう目で見られているミーミーには確固とした“猫格”が感じられました。
(撮影:橋詰かずえ)