緻密な安全保障の分析を米専門家や米議会関係者に投げ、充実した議論ができたことは本当に貴重な体験であり、また、そこで耳にした意見はこれからの我々の取り組みに大きなヒントを与えてくれた。
そもそも、この報告書を作成したのは、ND評議員のマイク・モチヅキ氏の「それを聞いてすぐに賛意を表明する人は、ワシントンにはいないだろう。でも、繰り返しそういった意見を伝えていくことでサブリミナル効果のように皆の心の中に浸透させていくことが重要」という考え方に基づくものでもある。引き続き、その効果をねらって発信に努めねばならない。
もっとも、辺野古の護岸工事が始まっている今、アメリカの人々に問題の詳細や沖縄の人々の苦悩を認識してもらうだけでなく、実際の変化を導き出さねばならない。そのためにはさらなる努力が必要である。
アメリカへの働きかけ方一つをとっても、沖縄の反対の声を伝えるという段階からその次の段階に今回踏み込んだつもりであるが、さらに一歩も二歩も前に進み、具体的な政策形成過程にかかわるフェーズに飛び込まない限り変化は期待できないだろう。容易ではないのは承知しているが、立法過程への働きかけなど具体的な変化に繋がるような働きかけを続けねばならない。
あるシンクタンク研究員とのディナーミーティングの際、つい先ほどまで日本大使館の官僚と話をしていたという彼がこう切り出した。
「私があなた方と会うという話をしたら『あの人たちには気をつけた方がいいですよ』と言われたんですよ」
彼は続けた。「日本政府にそのようなことを言われるあなた方は、影響力がある、いい仕事をしているということですね」。
この言葉を胸に、また次の挑戦を続けたい。
※「今こそ辺野古に代わる選択を -NDからの提言-」の全文は以下NDのウェブサイトよりダウンロードができる。
http://www.nd-initiative.org/topics/3372/
また提言をまとめた書籍『辺野古問題をどう解決するか――新基地をつくらせないための提言』(岩波書店)も2017年6月に刊行された。