元気のいいサンダース陣営と対照的なバイデン陣営
私は50軒ほどを担当したが、零下も続く真冬にもかかわらずその日は久しぶりに暖かい土曜の午後だったからか、半分くらいの家が留守であった。残りの人たちは家から出てきて、話を聞いてくれたり、自分の意見を述べてくれたりした。赤ちゃんをあやしながら「ちょっと手を離せないけどチラシ置いていって。あとで読むから」という調子で、邪険にされたところは一軒もない。
既にサンダース氏に入れると決めている人たちも何人もいて、「もちろんサンダース!」「君たちの活動に感謝!」との激励もたくさんもらった。
他の候補者を支持する人はその旨を述べにくいのかもしれないが、「サンダース、いいんだけどね。でも(But)、トランプに勝てるかどうか心配」「サンダースもいいけど、私はウォレン」といった程度で、はなからサンダースを批判する声はなぜかほとんどない。
中には「どうなったって、トランプが再選するんだから何をしても仕方がないわよ」というあきらめの気持ちを蕩々と話し続ける女性もいた。
一番多かったのは「まだ決めていない」という人たちだった。これは、私のチームの結果だけではなく、終わってから皆で集まって今回の戸別訪問全体の反省会をしたときも、全体的にそういう結果であった。
なお、1月30日時点の各種世論調査では、1位バイデン、2位サンダースが多いが、中には、1位サンダース、2位バイデンという結果の世論調査もある(CNN 2020/1/16 – 1/19)。しかし、家々を回った中で支持者が一番多かったのはサンダース氏であり、バイデン支持者はほとんどいなかった。バイデン支持者が少ないということについても、反省会で皆が一致した意見だった。私のチームメイトなどは冗談めかして、「世論調査で聞かれたら、一番批判されない『バイデン』ってとりあえず答えているだけで、実はバイデンをちゃんと推している人なんていないんじゃないの?」などと息巻いていた。
世論調査には地域性もある。しかし、メリーランド州はサンダース氏やウォレン氏の出身州ではない。どちらかといえばバイデンの出身州に近いとすら言える。全国の世論調査ではバイデン氏が一番なのに、堂々と「こんな点が評価できるから、絶対バイデン!」と語る人がいないのは、同氏の陣営としては嘆かわしい事態であろう。外野から見ていても心配になるほどであった。
「他にいい人がいないし、バイデンなら中道派だからトランプに勝てるかもしれない」というのがバイデン支持の一番の理由であると聞く。それを肌で感じる結果となった。
一軒一軒の訪問が終わるごとに、アプリに、「絶対サンダース」「サンダースに傾いている」「ウォレン支持」「バイデン支持」と記録する。それを基に陣営は、今後、再度の働きかけをしていくのである。
3時間近く回った後、近くのバーで反省会を兼ねた打ち上げ。若者たちが、戸別訪問でどんなやりとりがあったかを意気揚々と語っていた。
2月3日、民主党の候補者選出の第1回「党員集会」がアイオワ州で行われる。一緒に個別訪問した私のチームメイトから、「次の土曜はアイオワに飛んでいって戸別訪問をする!」とメールが届いた。アイオワ州の結果、あるいは、その翌週のニューハンプシャー州での予備選の結果が大きくその後に影響を与えると言われている。アイオワ州内で1月16日以降に行われた世論調査6つのうち、4つでサンダース氏が1位になっている。ニューハンプシャー州では、6回行われた世論調査すべてでサンダース氏が1位になっている。20代の若者に支えられた威勢のいいサンダース陣営が右肩上がりに調子を上げているが、さて、今後どうなるか。
全体の情勢を見つつ、バイデン氏やウォレン氏の選挙陣営を覗く機会ももちながら、アメリカ社会の動向を引き続き報告していきたい。