また、国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」によると、正規の平均年収が504万円に対し、非正規の平均年収は179万円。これを男女別で見ると、男性非正規236万円、女性非正規154万円になる。
ちなみに2019年の労働力調査によると、女性非正規の44%が年収100万円未満だという。つまり、コロナ不況の前から非正規で働く女性の多くはギリギリの状態だったのだ。
もちろん大変なのは女性だけじゃない。私は前述した「いのちとくらしを守るなんでも相談会」の相談員をつとめたが、そこには当然男性の相談も多く寄せられた。居酒屋店主や、もう残金が2万円しかないという飲食店勤務の男性の声も聞いた。が、住む場所を失う、路上に行くかもしれないという場合、女性には女性に特化した支援が必要である。家がないと知られると、性的搾取の対象になる確率も高い上、女性の野宿にはあらゆる危険がつきまとう。
「まだ貯金があるから大丈夫」という人もいるだろう。が、この国には貯蓄ゼロ世帯が多くいる。金融広報中央委員会の19年の調査 によると、貯蓄がゼロ世帯は2人以上の世帯で23.6%、単身世帯で38%。現在、すでに貯金を切り崩しながらの生活に入ったという人は、様々な制度利用を考え始めた方がいい。
ということで、貯金が尽きた場合、もっとも使い勝手がいいのは生活保護制度だ。社会福祉協議会の貸付金とか住居確保給付金とか、すでに調べている人も多いだろう。が、コロナ収束がわからない今、それで本当に生活が立て直せるか、不安は尽きないはずである。
生活保護であれば、ざっくり言うと今の全財産が6万円以下くらいで収入のあてがなければ受けられる。働いても、年金をもらっていても、ホームレス状態でも国が定める最低生活費に満たない収入しかなければ受けられる。車があるとダメ、持ち家があるとダメと思っている人も多いが、一律ダメというわけでは決してない。また、コロナ禍を受け、生活保護を受けるにあたっての「条件」的なものは今、かなり緩和されているので「以前窓口に行ったけどダメだった」という人もこの機会に行ってみるといいかもしれない。
そうしてコロナが収束し、仕事ができるようになり、収入が保護費を上回ったら生活保護を「卒業」すればいい。今まで頑張って働いて税金を納めてきたのだ。制度を利用し、また働き始めたら納税という形で貢献すればいい。そういう「安心」のために税金を納めているのだ。
生活保護申請ができなかった、働けと言われた、などの場合「首都圏生活保護支援法律家ネットワーク 」にご一報(048-866-5040)を。また、日弁連も無料の電話相談(0570-073-567)を始めた。
一方で現在、「ステイホーム」の中、在宅勤務になった夫のDVが始まった、などの声も多く届いている。DV被害者支援団体「エープラス」の吉祥眞佐緒さんによると、この3月は、「通常の1.5倍から2倍くらいの相談が寄せられている」という。その中には、リモートワークで1日中家にいる夫に女中のように扱われる、夫に「マスクを用立ててこい」と言われて何軒もドラッグストアを周り、行列にも並ぶがどうしても入手できない、怖くて家に帰れない、などがあるそうだ。
そんなDV被害に困っている人は、4月20日から始まった「DV相談+ (プラス)」に電話(0120-279-889)してみてほしい。24時間受付で、外国語にも対応しているので、困っている人がいたらぜひ教えてあげてほしい。
今、みんなが大変だ。そんな中、「自分より大変な人がいる」と口をつぐむことは、他の人の口を封じてしまうことにもつながる。だからこそ、声を上げてほしい。そうしてとにかく生存ノウハウを交換して、生き延びていこう。
次回は6月3日(水)の予定です。