それは、私がこの数十年会った大人の中で、ダントツで幸福度が高そうだからだ。彼らとはよく中央線沿線の路上飲みや高円寺の溜まり場的な「なんとかBAR」で顔を合わせるのだが、いつ会っても機嫌が良く、現代人にありがちな「意地悪なところ」がひとつもない。ストレスゼロだからこそ、いつも優しくて楽しそうなのだろう。彼らを見ていると、「働くこと」がどれほど人から多くのものを奪っているかがよくわかる。
ちなみに神長さんはこの30年、目覚まし時計を使って起きたことが年に数回ずつしかないという。20年間くらい、毎日13時間寝ていたという「三十年寝太郎」だ。 それで50代半ばまで何の問題もなく生きてきたのである。
そうして資本主義が行き詰まる中、彼らの活動に再び光が当たっているという事実。
神長さんは以下のように言う。
〈いま、資本主義の終わりがはじまっているという。それは資本主義の社会で幸せに生きられない人が増えてきているということ。うつになっちゃう人や希望を持てない人、経済的に生活が苦しい人が増えていってる。そして気候変動も起こっている〉
〈格差が拡大してきて、資本主義をちゃんとやっていれば幸せになりますよ、というのも崩壊してきている。資本主義の当然の帰結だろうね〉
確かに神長さんの言う通り、この方向性でいっても幸せにはなれないどころか地球がヤバいということも世界的な問題だ。
ということで、一周回ってトップランナーとなっていた「だめ連」、ますます注目されてほしいが、神長さんとともにだめ連を始めたぺぺさんは3年前に胆管がんと診断され、23年2月、亡くなった。しかし、がん発覚以降はカンパをくれる人が多く、バイトをせずにカンパ生活となったというからもうお布施で暮らす神仏みたいなものである。そうしてぺぺさんが亡くなった時は行きつけの居酒屋などに棺桶や遺骨を持ち込んでの「お別れ交流会」が最大に開催され、全国から650人が集まった。天晴れ、交流人生である。
ということで、本書のあとがきによると、神長さんは本を読んだ人と交流したいそうで、〈旅がてら自費で行こうと思ってますので、よかったら誘ってみてください〉 とのことだ。
ここからさらに、交流の輪が広がっていく。
寝てたら時代の最先端にいたという「だめ連」のこれからが、私は楽しみで仕方ない。