日経平均株価は、株式市場における「日本代表」の成績である。日本代表の数は、日経平均株価の英語の略称“Nikkei225”が示すように、225銘柄。これは、サッカーのJ1に相当する東京証券取引所1部に上場されている、1700あまりの銘柄から、225銘柄を選び出し、その株価を平均したものだ。サッカーの日本代表が、ゴールキーパーやフォワードなど、ポジションごとに選手を選ぶように、日経平均株価も、食品、繊維、電機、自動車など、様々な分野から選ばれ、偏りがないように配慮されている。
銘柄を決めるのは、平均株価を算出し、その算出法の著作権を保有している日本経済新聞社が行う。日経平均株価は以前、日経ダウ平均と呼ばれていたが、それは、算出法がアメリカのダウ・ジョーンズ社の「専売特許」だったため。ダウ平均という名前は、現在でもニューヨークの株式指数で使われているが、日本経済新聞社が1985年に権利を買い取ったことで、「ダウ」という名前が消えることになったのである。
日経平均株価は、選ばれた225銘柄の株価を平均することで求められる。1株100円のA社と300円のB社があれば、平均株価は(100円+300円)÷2=200円という、単純な計算が積み重ねられていく。しかし、新聞の株式欄を見れば分かる通り、個々の株価を平均しても日経平均株価のような数字にはなりそうにない。実はここに、ダウ・ジョーンズ社が開発した、平均株価算出のノウハウが隠されているのだ。
例えば、ある会社が、株価100円の株式を2株に分けるという、株式分割を行ったとしよう。この場合、株価は半分の50円になるが、このまま単純に計算すると、平均株価が本来の株価の動きとは無関係に下がってしまう。ダウ・ジョーンズ社は、こうした特殊な株価変動を排除する調整方法を編み出し、連続性を保持する算出法を開発したのだった。
日経平均株価がスタートしたのは、1949年5月16日。この時は全く調整が行われていなかったことから、終値は176円21銭と、個々の株価と比べて違和感がない。その後の半世紀を超える歴史の中で調整が続けられた結果、個々の株価との乖離(かいり)が進んでいったわけなのだ。
長い歴史を持ち、日本の株価を示すもっとも重要な指標である日経平均株価だが、いくつかの問題点が指摘されている。
まず、銘柄の入れ替えによって、株価の連続性が失われる恐れがある点だ。銘柄の選考を行う日本経済新聞社は、活発に取引されている銘柄を中心に、毎年数銘柄を入れ替えているが、2000年には一気に30銘柄を入れ替えた。これによって平均株価が大きく変動、時の宮沢喜一蔵相が、「連続性が失われた。信用できない!」と厳しく批判する場面もあったのだ。
また、発行されている株数にかかわらず、株価だけを集計することから、発行株数が少ないが株価が高いという値がさ株(IT関連株などに多い)の動きが反映されやすい一方で、株価が低いが発行株数が多い大型株(鉄鋼や電力株などが典型)の動きが反映されにくい、という傾向もある。
こうした中、NHKのニュースでも、東証1部上場企業の全銘柄の動きを示す、東証株価指数(TOPIX)が先に取り上げられるなど、日経平均株価が、かつてのような絶対的な位置づけを失いつつあることも事実。しかし、株価といえば日経平均株価というように、株式市場を示す指標としての地位は変わらない。
日本中の企業の中から、225銘柄を選んで算出される、「株価の日本代表」である日経平均株価。時々刻々と変わるその数字は、日本経済の戦況を、凝縮して示し続けているのである。