「お陰様でいいですよ!」
「ウチは全然ダメだねぇ」
街角で何気なく交わされている会話だが、景気の現状を反映していることも事実。そこで、日本銀行(日銀)は企業を対象にした景気のアンケート調査を行い、金融政策の判断材料にしている。これが「短観」だ。
「短観」の正式名称は「全国企業短期経済観測調査」。仰々しい名称だが、その内容は極めてシンプルだ。業況について、「1.良い」「2.さほど良くない」「3.悪い」の三つから選ぶなど、街角での会話と大差はない。
そんな「短観」が注目されるのは、その規模と正確性にある。2007年3月調査の場合、調査対象は大企業から中堅・中小企業まで1万958社と多く、回収率も98.7%と極めて高い。しかも、社長など経営の中枢にいる人が回答する場合が多く、調査した翌月に発表と速報性も高い。これが、「短観」が景気を読む上で最重要データの一つとされている理由だ。
短観には資金繰りや在庫など、幾つかの項目があるが、最も注目されているのが大企業・製造業の「業況判断指数」だ。業況DI(diffusion index)とも呼ばれるこの数値は、業況が「良い」と答えた割合から、「悪い」と答えた割合を差し引くという単純な数値。これがプラスであれば、景気が良いと考えている企業が多く、反対にマイナスであれば、景気が悪いと感じている企業が多いことになり、その増減で景気動向が読み取れるというわけだ。
「短観」は3、6、9、12月と年4回調査が行われ、翌月(12月調査のみ同月)の、株式市場が開く直前の8時50分に発表されるが、その瞬間を市場関係者はかたずをのんで待つ。「短観」の結果が、株式市場や外国為替市場も大きく動かすからだ。また、その結果が日銀の金融政策や、政府の経済政策を左右することもあるほど、重要な役割を担っているのだ。
「短観」は海外でも“TANKAN”と、そのまま通じるほど、高い認知度を持っている。「景気はどうですか?」こんな単純な日銀の問いに、全国の企業経営者が真剣に答える「短観」は、世界でも類を見ない最強の景気調査なのだ。