日本経済を1億2000万人が乗る巨大な旅客機と考えると、企業はその部品、倒産件数は壊れてしまった部品数に相当する。旅客機にダメージを与える不景気という飛行環境の悪化は、壊れる部品の数、つまり企業倒産件数を増加させる。反対に景気がよくなれば、旅客機の運行は安定、壊れる部品の数も少なくなる。企業倒産件数は、景気の動きを敏感に反映するものなのだ。
企業倒産件数は、帝国データバンクと東京商工リサーチという、いずれも民間の調査会社が独自に調査、毎月15日前後に、前々月のデータを発表している。集計されるのは、負債総額1000万円以上の倒産企業。倒産には法的な定義がないことから、不渡りを2回出して銀行取引停止処分になった場合のほか、民事再生法や会社更生法の適用を申請した場合などについて、集計が行われている。
二つの調査会社は、倒産件数のほかに、負債総額も発表する。企業倒産件数が壊れた部品の「数」なら、負債総額は壊れた部品の「大きさ」を示すもの。脱落した部品数が少なくても、大型倒産が増えて負債総額が膨れた場合は、経済の主要部分での損傷が進んでいると考えることができるのだ。
企業倒産件数のデータには、このほかに倒産の理由、業種なども細かく集計されている。ここから、経済のどの部分がダメージを受けているかをチェックすることができるのである。
景気の動きと密接な関連を持つ企業倒産件数だが、景気が悪化し始めてもすぐに増加することはない。企業の経営者は、経営環境が悪化する中、懸命に経営を続け、遂に力尽きて倒産に追い込まれるため、企業倒産件数が増加を始めるのは、景気がかなり悪くなってから。場合によっては、景気が底を打った後に、倒産件数がピークを迎えることもある。
反対に、企業倒産件数の減少が鮮明になるのは、景気回復がかなり進んでからのことになる。このように、企業倒産件数の動きは、景気の変動を最後に反映するのだ。
「企業倒産件数は、前年同月比+5.5%。資源高の影響を受け、内需関連業種の倒産が増加」。帝国データバンクは、2008年1月の倒産件数上昇をこのように総括している。企業倒産件数のデータを見ることで、日本経済が置かれている状況を的確に把握することができるのである。