「ダウ平均株価」にも同じことが言えるだろう。ニューヨーク株式市場の動きを示すものとして、メディアなどに頻繁に登場するダウ平均株価だが、正式名称は「ダウ工業株30種平均」。わずかに30銘柄の株価しか集計されていないのだ。
ダウ平均株価はアメリカの通信社ダウ・ジョーンズ社が開発、自らが計算して公表しているものだ。当初は工業関係の株式30銘柄を集計していたが、現在では金融やIT関連企業などが含まれ「工業」の枠組みは取り払われ、ニューヨーク証券取引所の他にナスダック市場の銘柄も含まれている。
算出方法は単純で、株価を合計して銘柄数で割るというものだ。しかし、1株を2株に分けるという「株式分割」や「新株発行」など、株式市場の動向とは別の要素によって株価が変動することがあるため、こうした要素を取り除くための「除数」を導入し、調整が行われている。この除数の計算方法を開発したのがダウ・ジョーンズ社であることから、同社の「専売特許」になっているのだ。
ダウ平均株価の算出方法は、日本の日経平均株価でも採用されている。日経平均株価は1975年、日経新聞がダウ・ジョーンズ社と提携して導入されたもので、当初は「日経ダウ」と呼ばれていた。85年、日経はダウ・ジョーンズ社との提携を解消したことから、「日経平均株価」と呼ばれるようになった。
ダウ平均株価が初めて公表されたのは28年で、以来一度も途切れることがないことから、世界中の投資家からその動きが注目されてきた。しかし、わずかに30銘柄の株価だけで、本当に株式市場全体の動きを表しているのか?という、視聴率調査と同じ疑問が投げかけられることもあった。また、銘柄の入れ替えによって連続性が失われるとの指摘もあり、これも視聴率調査と同じである。
こうした中、「ナスダック総合株価指数」など、より広範囲の株式を集計する指数も公表されるようになっている。ナスダック総合株価指数は、ダウ平均株価とは異なりナスダック市場に上場されているおよそ5500銘柄すべてが集計されている。テレビを見ているすべての家庭に調査端末が設置されていることになり、信頼性ははるかに高いとも思える。
しかし、一般的にはダウ平均株価のほうが注目され続けている。ダウ平均株価がより長い歴史を持っていること、さらにはわずかに30銘柄ではあっても、厳選された30銘柄であるからこそ、株式市場の動向を抽出し、より明確にとらえていると考えられているからなのだ。
IBM、ボーイング、マイクロソフト、マクドナルド、ディズニー…。ダウ平均株価を構成している30銘柄はアメリカ、そして世界経済の縮図だ。視聴率の調査方法に疑問を持つテレビ局関係者は少なくないが、ダウ平均株価を明確に否定する株式市場関係者は皆無と言ってよいほど、高い信頼性を勝ち得ているのである。