日本人のメジャーリーガーが次々に誕生し、大活躍している。彼らはまず高校野球で活躍し、人によっては大学野球やノンプロを経験した後に、日本のプロ野球で活躍、ついには世界最高のプレーヤーたちが集うアメリカメジャーリーグへと上りつめたのだ。
日本の企業にとってのメジャーリーグに相当するのがニューヨーク(NY)証券取引所だ。設立は1792年5月17日、マンハッタンのウォール街にあるローマ神殿のような建物は、1903年に建てられたもので、世界経済の中心としての威厳を放っている。
上場されている企業は2764社(2006年末現在)。上場基準は世界の証券取引所の中で最も厳しく、選りすぐりのエクセレントカンパニーが集結している。
世界の株式市場の構造は、野球とよく似たものとなっている。野球の場合、大きく分けると、高校野球や大学野球といったアマチュアリーグ、プロ野球の1軍と2軍といった具合に、選手の実力や経験に応じた階層分けがされている。
株式市場も同様で、まず、創業から間もない企業がプレーするのが、「新興市場」だ。東京証券取引所が運営するマザーズ、大阪証券取引所が運営するヘラクレス、独立系のJASDAQなどがある。これらの市場は、アマチュアリーグに相当するもので、比較的簡単に上場し、プレーをすることができる。
次のステップが、東京証券取引所や大阪証券取引所の第2部となる。これはプロ野球の2軍に相当する。
そして、さらに企業が大きくなり、業績も上がると、第1部へと昇格となる。中でも東京証券取引所の第1部は、日本のプロ野球界の1軍に相当する最高峰であり、ここに上場するためには、企業の規模や業績はもちろん、法令順守など、企業の社会的な責任も厳しく審査される。日本を代表する市場でプレーするにふさわしい選手であるかどうか、厳しく問われるわけだ。
そして、この中から、真に世界的な企業として認められたものだけが、NY証券取引所に上場を許される。日本企業で最初に上場を果たしたのはソニー(1970年)で、その後、松下電器産業や本田技研工業などが続くが、トヨタが上場したのが99年とそのハードルは高く、2006年末現在の日本企業の上場数は19社にとどまっているのが現状だ。
NY証券取引所に日本企業の上場が増えない理由の一つが、グローバル化の遅れである。日本語で事が済む国内の株式市場とは異なり、NY証券取引所では、全ての仕事を英語でこなす必要があり、実力はあっても二の足を踏む企業が少なくない。それに加えて、現在のNY証券取引所は、上場する企業に対して極めて厳しいコーポレートガバナンス、つまり法令順守の徹底を求めているのだ。その背景には、エンロンやワールドコムといった、上場企業の不祥事が相次ぎ、信頼が失墜した苦い経験があり、近年、その上場基準は一段と厳しいものになっている。こうしたことが、日本企業のNY証券取引所上場への道のりを、険しいものにしているのである。
しかし、NY証券取引所に上場することによるメリットは計り知れない。それは、世界一流の企業であることの証であり、誇りと威厳、そしてビジネスにおける信用力を飛躍的に高めることが可能となるのだ。
メジャーリーグで活躍し、アメリカのスタープレーヤーと親しげに会話を交わす日本人選手の姿は実に格好良く、日本人の誇りでもある。日本の企業も負けないように、どんどんNY証券取引所に上場し、真の意味でのメジャー級の活躍を、国際舞台で展開して欲しいものである。