芸能界以外にも、「受験御三家」など、いろいろな分野で使われる御三家という言葉は、江戸幕府の中でも最も有力な尾張、紀伊、水戸の「徳川御三家」に由来、その時代を代表する人や団体の総称として使われてきた。
また、「御三家」の存在に迫る新興勢力が登場すると、「新御三家」、さらには「新新御三家」など、御三家の顔ぶれは、時代の変遷に合わせて変わっていく。
“BRICs”は、世界経済における「新御四家」と呼べる国々だ。
Bはブラジル(Brazil)、Rはロシア(Russia)、Iはインド(India)、Cは中国(China)で、最後の小文字のsは、複数形を示す。アメリカの証券会社ゴールドマンサックスが、2003年に発表したレポートに登場させ、世界的に広がっていった言葉だ。
ゴールドマンサックスのレポートは、BRICsの国々が急成長を続け、やがて世界経済の勢力地図を大きく塗り替える経済大国になると予測した。
その理由としては、まず、人口が圧倒的に多いことを挙げている。中国が約13億人と世界一、インドが約10億5000万人で2位、ブラジルが5位、ロシアが7位で、合計すると全世界の人口の約4割を占める。また、国土もロシアが1位、中国が3位、ブラジルが5位、インドが7位、合計で約3割を占めるなど広大で、多くの天然資源を抱えている。
経済発展に必要な条件をすべてそろえているBRICsは、今後急成長し、世界経済の「新御四家」となると予測したわけだ。
また、ゴールドマンサックスは05年に、BRICsに次ぐ経済大国予備軍として、11カ国を挙げてNext-11(Next11)とした。韓国、バングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナム、メキシコの11カ国だ。
これらの国々のすべてが、BRICsのような発展を見せるかどうかは疑問ではあるが、この内のいくつかが、新たな新興勢力となることは十分に考えられるだろう。
一方、追われる立場の先進各国が、苦しい立場に追い込まれることは確実だ。現在の世界経済は、先進7カ国(G7)と呼ばれる、アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、カナダによる「御七家」が形成されている。
しかし、日本を含め、アメリカ以外の6カ国は、潜在的な経済力や発展の可能性において、「新御四家」であるBRICsに太刀打ちできそうもないのが現実なのである。
BRICsの名付け親となった、ゴールドマンサックスのレポートでは、2050年のGDP(国内総生産)のランキングは、1位から順に、中国、アメリカ、インド、日本、ブラジル、ロシアになると予測している。日本は4位にとどまってはいるが、果たして大丈夫だろうか…。
ベテランよりも、若くて将来性のあるタレントを求めるのが世の中の常だ。パワフルで、歌も上手くて、身長も高くルックスも良くて、安いギャラで働いてくれる…。BRICsという「新御四家」に、世界経済のスターの座を追われかねないのが、日本の現状なのである。