G7についても同じような感想を持ってしまう。G7は「先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議」のこと。“G”は“Government”ではなく、“Group”の“G”。“Group of Seven”の略がG7で、「ID野球」と同様に少々拍子抜けしてしまう。
しかし、その役割は極めて重要である。G7は当初、G5としてスタートした。メンバーは米、英、仏、独、そして日本で、その後、カナダとイタリアが加わりG7となった。通貨問題を中心とした国際経済全体の問題を話し合い、一致協力して政策を展開しようというのがその目的である。
メンバーは各国の財務大臣と中央銀行の総裁。企業や投資家を「野球選手」と考えるなら、国という「チーム」の「監督」と「ヘッドコーチ」に相当する。この「野球」は国境を越えて行われることから、各国の「監督」と「ヘッドコーチ」が定期的に集まって、秩序を持って試合が展開されるように協力しようというわけなのである。
G5の最初の大きな仕事が、1985年のプラザ合意だった。G5各国が協力して、ドル相場を強引に下落させようとするもので、アメリカの「監督」も一緒になって、「ドル」が負けるように各国の「監督」たちが行動に出たのだ。その衝撃は極めて大きく、プラザ合意前に235円だったドル・円相場は、1日で20円もドル安・円高となり、1年後には半分の120円台になってしまう。これ以降、G5、そしてG7の場で、どんなことが話し合われ、どんな政策が打ち出されるのかに注目が集まるようになったのだ。
また、G7では「何が決まったか」と同時に、「何が決められなかったのか」も重要な要素となる。例えば、急激な円高で日本経済が苦境に追い込まれていた場合、日本からは円高を止めるように残りの国々に働きかけが行われる。これに各国が応じ、円高阻止に合意してくれれば、最終的な合意内容である「共同声明」には、「円高を阻止するために、各国が一致協力する」といった文言が盛り込まれ、場合によっては「協調介入」という直接的な行動が取られることもある。
ところが、円高が自国の利益につながるとして、G7の残りの国が消極的な姿勢を示す場合もある。意見が一致しなければ、「共同声明」には円高について言及されない。これを見た外国為替のディーラーや投資家たちは、「G7は円高を容認している。もっと円高になるに違いない!」と、一斉にドルを売って円を買う動きに出て、大きく円高に振れてしまう恐れも出てくるのである。
G7では通貨のみならず、世界の金融市場の安定についても、協力態勢が打ち出される場合もある。アメリカの同時多発テロやサブプライムローン問題などで、世界同時株安や金融不安が発生した場合、各国が同時に緊急資金供給などの対応策を実施、不安解消を図るといったことも行われる。パニックに陥った選手たちに、監督が「大丈夫だよ」と声をかけるというわけだ。
G7のGは“Group”のG。野村監督の「ID野球」同様の単純な言葉だ。しかし、その役割は決して単純ではない。G7は、世界経済で展開されている「野球」が秩序を持って行われるように、先進7カ国という野球チームの「監督」と「ヘッドコーチ」たちが、様々な政策を打ち出す極めて重要な場なのである。