合衆国という名の通り、アメリカは州の独立性が強く、中央銀行も地域ごとに設立されてきた。しかし、国家レベルでの金融政策が必要になったことから、1913年に、12の地区連銀はそのままにし、それを統括する組織を新たに設けて、金融政策の一元化を図った。それが、連邦準備制度理事会(FRB)だ。議長と副議長を含む7人の理事で構成され、その中の議長が中央銀行総裁としての役目を担っている。
ニュースなどでは、「アメリカの中央銀行にあたるFRBは…」と伝えられるが、厳密に言えば、FRBは金融政策の決定機関であり、中央銀行としての機能はない。もし、正確に言うなら、「アメリカの中央銀行である12の地区連銀を統括するFRBは…」となる。また、FRBという略称も日本のメディアがつけた俗称。アメリカでは“Fed”と言わないと通じない。
金融政策を決めるのは、連邦公開市場委員会(FOMC Federal Open Market Committee)だ。FOMCの7人の理事に加えて、ニューヨーク連銀の総裁、そして、残る11の地区連銀の総裁から持ち回りで選ばれた4人、の合計12人の多数決で、金融政策の目標となるFF金利(Federal Fund Rate)の水準を決定する。
こうした仕組みは、日銀が「金融政策決定会合」で、無担保コールレート翌日物を決めるのと同じ。実は日銀が、FRBのシステムをそのまま導入したためで、元祖はアメリカにある。
ドル紙幣を手にすることがあったら、入念に眺めて欲しい。「日本銀行」と大きく記された日本の紙幣とは対照的に、ドル紙幣にはFRBという文字は見当たらない。“Federal Reserve Note”という文字と、発行された地区連銀を示す記号が記されているだけだ。96年以降の新デザイン紙幣では、紙幣番号の下に“K11”(Kは11番目の地区連銀ダラス)などと、簡略表示されている。アメリカが、12の地区連銀とそれを統括するFRBという、世界でもまれな中央銀行システムを持っていることを、ドル紙幣は教えてくれているのである。